本研究では、ガラス転移温度の上下で剛性の変化する形状記憶ポリマー(SMP)を用いて柔軟性と感度可変のロボットアームを開発した。最終年度も、以下のように要素技術の開発を進めた。 <空気圧ゴム人工筋> 人工筋の作製方法を変更することで、柔軟で破損しにくく、なめらかに大きく湾曲させることができた。一方、人工筋の湾曲角度増大のため、シートを分割して異方性を持たせたSMPシートを作製し、各種実験により、シートの性能向上を確認した。 <ロボットの皮膚(触覚センサ)> SMPシートに埋め込んだ電熱線形状を変更し、温度分布の均一化ができた。また、対象物の安定した保持を目指し、荷重負荷時の変形量を大きくできるような構造改良を検討した。 <力覚センサ> 構造の改良によって、市販のロードセルと同等のサイズに小型化でき、温度変化による感度の差を大きくできた。 さらに最終年度は、以上のように開発してきた触覚センサと人工筋を実際に搭載したアームを作製して評価した。触覚センサの柔軟性を変更することで、センサ上面に載せた物体の保持性能が向上した。また、アーム先端に搭載した人工筋の柔軟性を変更できた。一方、開発した人工筋を用いてアームに搭載可能なロボットハンドを作製し、従来では把持が難しいサイズのものも含め、さまざまな形状の対象物を把持できた。 研究期間全体の研究成果として、査読付き雑誌論文1件、学会発表24件(うち招待講演3件/うち国際学会2件)、図書1件など技術の蓄積は進んだ。従来、工場と日常生活で使用するロボットには求められる仕様が異なり、異なったロボット開発が必要であったが、本研究課題により開発を進めたロボットアームは、産業用ロボットに必要な正確性・高剛性と介護・福祉ロボットに必要な柔軟性を両立でき、両分野で応用可能である。一方、開発した各要素技術は個別に使用でき、さまざまな分野で応用が期待できる。
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