研究課題/領域番号 |
17K06272
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
大隅 久 中央大学, 理工学部, 教授 (00203779)
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研究分担者 |
相山 康道 筑波大学, システム情報系, 教授 (60272374)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パラレルワイヤ懸垂系 / 協調制御システム / 組み付け / コンプライアンス |
研究実績の概要 |
本研究課題では,6本のワイヤで懸垂された円筒の重量物の,3台のマニピュレータの協調制御による丸穴への挿入,及び引き抜き手法の開発を目的としている。それぞれのマニピュレータ手先には2本のワイヤが取り付けられ,それらの先端が懸垂物に接続されている。これにより懸垂物は揺動運動することなく,3台のマニピュレータ手先位置に応じて,3次元空間内で位置決めできる。一方,懸垂物に一定以上の大きさの外力が作用すると,ワイヤにたわみが発生し,過大な内力の発生を防止することができる。この特性を利用し,組み付け,分解作業を実現するのが目的である。29年度は,まずそのための基本特性として,3台のマニピュレータ手先位置が与えられた際の,外力に対する張力変化を張力楕円体で表現し,ワイヤがたわみやすい方向,たわみにくい方向を可視化して表現した。また,この楕円主軸がマニピュレータ動作によりどのように変形するかを定式化した。一方,懸垂重量物が丸穴と衝突することにより,懸垂物接触点には強制変位が加わることとなる。これにより6本のワイヤのうちどのワイヤにたわみが発生するのかを導出するアルゴリズムを構築した。強制変位が懸垂物の1点に与えられると,どれか1本のワイヤではなく,同時に複数のワイヤにたわみが発生する。この現象は重力場で発生するため,一旦どれかのワイヤがたわんでしまうと力の釣り合いが崩れ,重力,穴との接触点の力,及びたわみのないワイヤの張力が釣り合う新たなつり合い点に向けて,懸垂物が運動を行うこととなる。この新たなつり合い点を求めるための探索方法として,予めたわみの発生するワイヤの本数,及びどのワイヤがたわむかを仮定し,力の釣り合い点が存在するかどうかをチェックしていくことで,物理的に可能な変位を決定する手法を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は主に,理論的な特性の導出,及びそれを基にしたアルゴリズムの構築を計画し,ほぼ計画通りの成果を得ることができた。アルゴリズムに関しては,接触が発生した瞬間のみを想定しており,その後懸垂物に強制変位が加わった場合の考慮はしていない。どれだけ強制変位が加わることを想定するかは,実際の作業対象に応じて決定される条件となり,例えば建設のように油圧駆動されるクレーンの場合には,ある程度強制変位を想定した動かし方が必要となる。29年度に強制変位に対する釣り合い位置の変化は導出したことから,30年度では,懸垂物に強制変位が加わったことを前提としたマニピュレータの動作アルゴリズムも検討する。
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今後の研究の推進方策 |
30年度はアルゴリズムの詳細を決定し,実験を行うためのシステム構築を行う。クレーンなどを想定した場合,懸垂物の位置,姿勢の測定精度,あるいはクレーンの位置決め精度は高いとは言えず,リアルタイムでの懸垂物位置・姿勢の計測が必要となる。そのためのセンサとしてレーザーレンジファインダの他に,IMUの利用を検討する。研究計画時には産業用マニピュレータのみを想定しており,その位置決め精度は十分に高いことを前提としているが,本手法の提供範囲を拡大するには,懸垂物の位置・姿勢を懸垂物に取り付けた内界センサで計測できることが望ましい。そこで,センサとして新たにIMUを利用し,その精度を検証するために,レーザーレンジファインダを利用する。これらセンサ情報を利用して,挿入・引き抜きアルゴリズムに適用し,作業に必要な精度,センサ情報の利用方法等を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,協調制御のための産業用マニピュレータを1台購入する予定としていたが,懸垂物の位置,姿勢計測のためのセンサが新たに必要となることがわかったため,マニピュレータは他のプロジェクトで利用予定だった1台を流用することとし,センサを追加購入することとした。マニピュレータは高額なため,この使用目的を変更したことで初年度の使用額が減少した。今年度は,精度の高いレーザーレンジファインダ,及び張力測定の力センサ,懸垂物の姿勢計測のためのIMUを導入するため,研究費の大きな部分をこれらの購入に充てる予定である。
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