研究課題/領域番号 |
17K06274
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
坂上 憲光 東海大学, 海洋学部, 准教授 (20373102)
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研究分担者 |
小金澤 鋼一 東海大学, 工学部, 教授 (10178246)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水中多関節グリッパ / 包み込み把持 / 水中ロボット |
研究実績の概要 |
水中では流体によって極端に摩擦係数が低い対象物や,藻類・生物・泥やそれらが付着して様々な形状や硬さ(柔らかさ),脆さを持つ対象物が多い.既に,物体の形状に合わせて変形し,包み込み把持をする水中ロボットグリッパも検討されてきた.しかしながら,本申請で提案するグリッパはそれとは異なり,関節剛性を制御ができ,低摩擦接触・流体中でも 安定した包み込み把持ができる水中多関節グリッパの設計条件や把持条件を明らかにし,その開発を目指している. この実現のため当該年度の一つの研究として,物体-グリッパ間の摩擦係数や流体力(付加慣性力と流体抗力)の係数や流速条件を変更できる二次元シミュレータを開発した.このシミュレータに,陸上用に開発してきたグリッパの物理パラメータを反映させシミュレーションスタディを行った.水中のような摩擦力が極端に低い条件下でもグリッパが対象物を包み込むおかげで把持に成功する結果を確認した.また流速条件が大きくなると把持状態からでも対象物を取り逃す結果も見られたが,グリッパの関節剛性の調整によって流速下でも頑強な把持を継続できることを確認できた.摩擦係数,流速条件,抗力係数,グリッパ関節剛性等のより定量的な関係の解析については現在取り組み中である. 包み込み把持を実現するグリッパの駆動部分や制御機器に関わる選定や防水の基本設計は終え,現在は製作中である.グリッパと水中ロボット間との通信規格についても確定し,水中ロボット側の制御基板の修正を終えており,水槽実験に向けて準備を進めている.製作に関しては計画より進んでいる状況である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,水中において包み込み把持を実現する多関節グリッパを実現するため, (1)物体-グリッパ間の摩擦係数を考慮した包み込み把持のシミュレーションと解析 (2)物体及びグリッパへの流体力を考慮した包み込み把持のシミュレーションと解析 (3)包み込み把持を実現する水中グリッパの設計と一部製作 の課題を挙げていた. (1)と(2)に関係する数値シミュレータを開発することができ,摩擦力や流体力の条件を変えながら数値結果を得られる状況となった.物理パラメータや各係数等を変更しながらグリッパによる把持の実現性について解析している段階である.(3)では水中グリッパの防水設計を終え,全体の製作も順調に進んでいる.さらに水中ロボットへのグリッパ搭載を考えた通信方法の決定や基板製作の準備については計画よりも進んでいる.課題(1)(2)では解析の部分が一部達成できていないが,課題(3)については当初計画していた設計と一部製作のみならず,水中ロボットを含めた全体の実験準備まで進められており,総合的には「おおむね順調に推移している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度,一部達成できなかった摩擦係数,流速条件,抗力係数,グリッパ関節剛性に関する解析を行う.そして従来計画していた(1)水中ロボット-グリッパのシミュレーションと解析,(2)水中グリッパの製作と単体動作試験,計測の基礎実験を実施する.(1)では水中ロボット本体の動作と合わせ,対象物へのリーチングから包み込み把持までのシミュレーションスタディを行う.(2)では水中グリッパを完成させ,水中での動作試験およびいくつかの形状や硬度(柔らかさ)の物体に対して把持が可能であるかを実験する.本グリッパの特性を活かし,対象物の形状や硬さの推定の実現性についても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等について想定していたよりも購入金額を抑えられたため.
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