関節剛性を調整でき,様々な水中物体を包み込み把持できる水中ロボット・グリッパシステム及びそのシミュレータ開発を行い,有効性を検証するための水槽試験を行った.グリッパ単体実験では,水流下において複数の形状・柔らかさを持つ物体をグリッパに把持させ,関節剛性を調整することで安定した物体把持が可能であることを確認した.水中ロボットにグリッパを搭載した浮遊状態での物体把持試験も実施し,水中作業におけるグリッパの有効性を確認した. 開発されたシミュレータでは,グリッパの物理パラメータ,流速,関節の剛性,グリッパと物体間の摩擦係数,付加慣性力・抗力,把持物体の形状・抗力係数を任意に変更できる.水槽試験の結果とグリッパの物理パラメータを反映させたシミュレーションとの比較をしたところ,ほぼ同等の結果が得られることがわかり,シミュレータの妥当性も確認することができた.この成果によって流速下で物体を把持するための適正な関節剛性値等を含む設計条件や把持条件を事前に検討できるようになり,水中グリッパの開発に役立てるものとなった. 水中グリッパ・ロボットのハードウェアの改良も行った.グリッパの関節剛性を調整するバネに,その伸び量を計測するリニアポテンショメータを取り付け,物体把持(外部から受ける力)によるグリッパの変形を計測できるものとした.また,グリッパを構成していた差動歯車を水中浮遊物や植物等から保護する被覆カバーを取り付けるための改良,防水性能を向上させるための改良等も行い,より実水域で利用できるグリッパに近づいた.ロボット本体には,グリッパによる将来の水中ロボット作業を想定し,オペレータ(人間)と制御システムが協調作業を行うことができる操縦支援システムを試作・導入した.以上の成果から,水中ロボット・グリッパの将来の改良,開発,水中調査等に活かせる状況が整った.
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