超高齢社会においては,日常生活で介護を必要とする高齢者及び加齢による障害者の増加が不可避である.申請者らは,屋内環境での移動,ベッドへの幅寄せ,作業を行いながらの横移動等に有効な全方向移動車いすの開発を行っている.しかし,人や障害物との衝突をいかに安全かつ自然に回避するか,介助者が車いすを押して動かす際にいかに意図通りの全方向動作を実現し,障害物回避と組み合わせるかといった点に課題が残っている.特に,ドア等の狭所通過時には,操作者(搭乗者または介助者)の意図に反する動作が生成されてしまう問題がある. 本研究ではこれらの課題を解決し,搭乗者にとっても介助者にとっても安全で,かつ操作性の良い全方向移動車いすを開発することを目的とする. 測域センサ(レーザ式全方向距離センサ)で計測した周囲の距離データに基づいて,速度指令ジョイスティックのインピーダンスを変化させるが,これまでにその最適化を行うため,小型全方向移動ロボットを使用し,多くの被験者による操作実験を実施して,その結果を主観的に評価していただいている.複数のコース設定に対して,複数のフィードバック則を適用し,それぞれについて操作感の評価をアンケート形式で回答するものとした. 特に狭所の通り抜け時の操作を対象として,シミュレーションにより最適な回避アルゴリズムの開発を行うとともに,被験者実験による操作感の評価を行い,アルゴリズムの妥当性を検証した.本研究により,安全でかつ操作性のよい全方向移動車いすの操作支援システムが開発された。
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