研究課題/領域番号 |
17K06286
|
研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
趙 菲菲 津山工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (20628846)
|
研究分担者 |
薮木 登 津山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50200572)
松島 由紀子 津山工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (60757615)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 視覚障害児 / 歩行訓練システム / 超音波センサー / 3D距離センサー / SHマイクロコンピュータ / 画像処理 / 訓練用音声 |
研究実績の概要 |
平成18年度の厚生労働省の調査では,日本の視覚障碍者の数は18歳以上で34万3000人,18歳未満で1万5800人となっており,年々増加の傾向にある.それに対し,盲学校や施設で働く歩行訓練士の数は約500人と,需要に対して供給が追い付いていないのが現状である.本研究では幼児など歩行に不慣れな障碍者の,歩行に対する恐怖心や抵抗感を減らし,安心した歩行を支援する装置の開発を目的とした.
H29年度では,手押し車に搭載した3D距離センサと障碍者の胸に装着した超音波センサを用いて障害物を検知し,視覚障碍者に障害物の存在を伝えることにより視覚障碍者の空間把握を支援することで,安全に歩行訓練ができる装置の開発を実施した.具体的に,基盤調査として,盲学校に行き,実際の訓練環境を考察し,音声システムに導入するための歩行訓練士らが視覚障害児にかける言葉を収集した。実際の視覚障害児歩行訓練を見学することにより,開発ポイントも抑えた。そして,盲学校の訓練士らからのアドバイスや指導により,考案した視覚障害児転倒時の保護機構が幼児の歩行に対し,妨げる恐れがあるため,自立して自ら訓練を行える事故の防止にも繋がる装置・システムの開発に向けて進んだ。システムの考案,構築,装着装置の試作,設計,製作を行い,その性能と実用性の評価を行った.訓練環境に取り込む予定の画像処理について,通常制限された空間を撮影するためには複数のカメラが必要であるが、全方位カメラを利用することにより、屋内等の限られた空間で、1台のカメラのみで、対象(利用者の動き)を追跡することについての検討も行った.システム面ではSHマイクロコンピュータによる高速な制御と拡張性を目指した.結果として双方を実現できたが,センサの問題と温度面,環境面での問題が判明した.よって来年以降の課題として温度面,環境面を検知することが改善点として挙げられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.視覚障害児の歩行訓練に対する基盤調査:実施完了. 2.視覚障害児の歩行に関する分析:実施完了し,盲学校の訓練士らからのアドバイスや指導により,考案した視覚障害児転倒時の保護機構が幼児の歩行に対し,妨げる恐れがあるため,自立して自ら訓練を行える事故の防止にも繋がる装置・システムの開発に向けて進んだ. 3.画像処理:屋内等の限られた空間で、1台のカメラのみで、対象(利用者の動き)を追跡することについての検討も行った. 4.音声システム:障碍者が身に着けた2つのセンサから障害物との距離を計測し,Visual C++とマイコン(SH7125)を用いて距離に応じた音声やビープ音を選択する.選択した音を出力し,視覚障碍者に障害物の存在を伝達することができるシステムの構築を行った. 5.プロットタイプの試作:試作した.そして実験によってその性能と実用性の評価を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
研究の主な課題として,今まで装置の軽量化と装着のしやすさを目指し,後者は実現できたが,3Dプリンタのプラスチック樹脂とアクリルにより軽量化を行ったものの,電池の重さがかさみ十分な軽さにならなかった.よって来年以降の課題としてさらなる軽量化と重量の分散に適した装置の設計が挙げられる.そして,距離計算・音選択プログラムの実装,音声,ビープ音の作成および緊急停止ボタン押下時のプログラムの実装を行う予定. 平成29年度の研究では3D距離画像センサを用いた障害物検出プログラムの作成を行った.得られた距離画像において,小領域ごとの距離値を判定していき,一定の距離になった領域を近い対象として判断するプログラムを作成し,動作を確認した.しかしながら、複数対象が存在する場合において、一定の距離に存在する複数の対象を検出することはできなかったため,これについては今後の研究課題である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度研究計画として,1.転倒防止機構,画像処理,音声処理の結合:プロットタイプ歩行支援装置に画像処理および音声システムを導入し,制御システムを完成させる。画像処理においては,29年度は距離画像により求められた静止物体と動物体の識別を行った。30年度は距離画像カメラを台車に設置し,距離画像カメラから実データを取得し、障害物の判定ができるようにする。また,動物体においては動きを追跡し,動きを予測する。この結果において、台車の周囲環境を把握し,必要に応じて台車の動きへ反映できるようにする。2.盲学校で歩行訓練士の下での試運転:常に視覚障害児の歩行訓練を補助する歩行訓練士の判断も欠かせないため,システム全体を盲学校での試運転を果たし,実際の補助・保護機能を観察してもらい,アンケート調査を行う。そのため,国内旅費および運搬費が必要となる。3.情報フィードバックをし,微調整や改良を行う.歩行訓練士からの助言に基づいて,システム全体の微調整や改良を行う予定。 ということで,改良や改善するための追加部品および試運転を果すための運搬費用,国内旅費が必要とする.そして,情報収集や発信として,学会参加費用が必要とする.
|