研究課題/領域番号 |
17K06289
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
梅村 敦史 北見工業大学, 工学部, 助教 (90453795)
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研究分担者 |
高橋 理音 北見工業大学, 工学部, 准教授 (60301975)
田村 淳二 北見工業大学, 工学部, 教授 (40171897)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 風力発電 / 学習制御 / 系統連系インバータ / パワーエレクトロニクス |
研究実績の概要 |
電力需要は天候・気温に大きく影響されるので,翌日の天気予報で電力需要を予測するが,数時間毎の予測誤差を考慮して先行き需要予測を時々刻々修正する必要がある.経済配分計画(EDC)では数時間単位での需給変動に対応するのに対して,負荷周波数制御(LFC)では数十分間隔の変動を制御している.EDCとLFCが各発電機の調整余力以内に変動を抑えることで従来の発電所では調速機(GF)制御で残りの周波数変動を制御できている. 系統連系インバータを備えた風力発電を最大電力追従制御すれば,風力発電事業者は収入の最大化が可能となる.風力発電を受電する発送電事業者においては,風力発電も同様に天候の予測から得られる発電予想を修正しEDCを修正することになるが,それだけでは十分ではなく,想定の誤差が残るのでこれに対応することが必要とされる. 近年,系統連系インバータを仮想的に同期発電機として運転する技術が研究開発されている.この仮想同期発電機をGF運転させることは自然に実現が期待できる.しかしながら,このときの発電電力は風力エネルギーによるので風況によって変動する.電力系統に風力発電が大量に導入されると変動する発電電力によって周波数が変動し系統が不安定な状態になる. 期待できる風力発電の電力がわかれば,系統側から風力発電所に期待電力の発電を指令することができ,系統の安定に寄与できる.風力発電所では予想される変動電力の分の蓄電池を用意するなどすれば発電電力量を維持しつつ指令の電力供給が期待できる. 本研究では,永久磁石式同期発電機(PMSG)を備えた風力発電機の発電電圧と発電力から平均発電電力を実時間予測し,これを出力目標とすることで,風力発電の変動する出力を安定化する手法を提案する.提案手法によって,連携する系統の周波数安定化に寄与できることを,実風速データを用いた数値解析で検証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで,数値解析のための専用のコンピュータとソフトウェアを購入した.この数値解析のための実風速データを得るために,研究室に設置している風速計を用いて自然風速と小型風力発電機の発電電力の計測でデータの収集を進めてきている. 昨年から課題の小型風力発電機のブラシが摩耗によって発電ができなくなっていることについては,風力発電機の交換修理は完了したが,風力発電機測定用のパソコンが使用不能になっていることが判明し修理継続中になっている.そのため,新しいインバータ実験装置を用いての実験実施は遅れている. そこで,小型風力発電機を直接接続するのではなく,その代わりに直流電源をインバータの電源とし,定格速度で安定に動作する同期発電機および抵抗負荷からなる等価的な系統モデルをインバータの出力側に接続し,インバータを系統連系で動作させる実験を検討している.この実験はインバータを仮想同期発電機として動作できることを検証し提案手法の導入が実現可能であることを示すものである.実験に用いる連系インバータ制御には離散時間モデル追従制御を用いる.この制御法は非線形な仮想発電機モデルを時変発電機モデルとして導入した最適制御系である.従来の手法と比較して,非線形な発電機モデルに精度よく追従可能で,通常の運転状態の目標電力変動に対して無効電力が小さくなることを確認し,実際のインバータに適用することで必要な定格を抑えることが期待できる. この制御法は数値解析によって妥当性を示した.この成果は論文にまとめて発表している.
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今後の研究の推進方策 |
実風速の測定を引き続き継続するために,小型風力発電機の測定用パソコンの交換修理を進める.一方今後は,これまで測定して得られている風速データを利用した数値解析を優先して研究を推進する.提案手法は風速の統計的出現確率に基づいているため学習の効果を示すためには実際の風速を用いる必要がある.数値解析では,PMSG発電機モデルに入力する風速に予めすでに測定している自然風速データを用いる. 本手法は発電電圧と発電出力から粒子フィルタ手法を用いて風速を推定し,これにより平均電力を予測する.予測した平均電力を出力目標とすることで系統への安定な出力が可能となり,系統の安定化に貢献することが期待できる.そのために風力発電機モデルをIEEE3機9母線系統に導入し,本手法の有無による電圧変動や周波数変動の抑制の比較によって提案手法の有効性を示す. この解析で有効性が示されれば実際の系統の風力発電システムへ応用することの有効性も期待できる.得られた結果は論文として公表する予定である.そのために,研究期間の延長をしている.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表が年度をまたいだための論文投稿経費が繰り越した。研究を更に進めたうえでの投稿準備をすすめて次年度内の論文投稿を計画している。
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