研究課題/領域番号 |
17K06290
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
三浦 健司 岩手大学, 理工学部, 准教授 (90361196)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 同軸管法 / 3Dプリンタ / S行列 / ディエンベディング / ニコルソン・ロス法 / 誘電率 / 透磁率 |
研究実績の概要 |
初年度においては高周波回路理論に基づく被測定材料の材料定数算出アルゴリズムを構築し,誘電率・透磁率が既知の材料(空気)の測定による測定精度の確認とその向上に注力した。まず,同軸管内に挿入した被測定材料充填済み環状型容器全体の散乱行列(S行列)をベクトルネットワークアナライザを用いて測定した。環状型容器全体は「外側樹脂円筒部」,「蓋部と底部に挟まれた被測定材料」,「内側樹脂円筒部」の円筒三層構造と等価であると考えると,各部分の二端子対網の直列接続に置き換えることができることから,全体のインピーダンス行列(Z行列)は各部分のZ行列の和となる関係に,樹脂誘電率を代入して,「蓋部と底部に挟まれた被測定材料部分」の成分を算出した。続いてこの部分を,「蓋部」,「被測定材料部」,「底部」の平面三層構造と等価とみなすと,各部分の二端子対網の縦続接続に置き換えが可能となることから,回路全体の転送行列(T行列)に対し蓋部と底部のT行列の逆行列を両辺より乗ずるディエンベディング操作を施すことにより,被測定材料部分のみのT行列(その後の変換によりS行列)を求めた。最後に,このS行列にニコルソン・ロス法を適用することで材料定数を求めた。ベクトルネットワークアナライザの制御と得られたSパラメータから上記アルゴリズムによる誘電率・透磁率算出の一連の流れをmatlabと関連ツールボックスを使用することで実現した。 空気の測定を行ったところ,10%程度の誤差が認められ,その原因として蓋部-容器部間の接着層(もしくは空隙)が理由となっている可能性が高いと考えられたが,測定時の相対湿度による樹脂誘電率の増減を補正することで,比較的高精度な測定が実現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的達成のためには,アルゴリズムの構築,ネットワークアナライザを用いた測定系構築,測定精度の評価を行うことが必須である。当初の計画通り,本年度までにこれらをすべて実施することができ,一定の知見を得ることができたため,本研究は全体として概ね順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
前年度確立した材料定数算出アルゴリズムに関して,FDTD法を用いた電磁波シミュレーションの実行結果からも検証を行う。同軸管内に被測定材料充填済み環状型容器を配置し,同軸管端部に高周波電圧を印加することで電磁波を伝播させ,同軸管両端位置でのSパラメータをシミュレータで求める。この結果に前年度に検討したアルゴリズムを適用することで,被測定材料の材料定数を得るが,シミュレーションで設定した材料定数が高精度で得られるかどうかを,1~10GHzの周波数に対して検証する。また,外部磁界印加方法により,磁性複合材料の環状試験体円周方向への磁気配向を試みる。同軸管内TEMモードでの磁界方向は円周方向であり,同方向への配向付与が高周波帯における透磁率向上に寄与するものと期待される。本実験で作製する磁性複合材料においては,磁性体の体積割合が複合材料透磁率に与える影響が顕著であるため,母材となる樹脂と磁性粉のみで構成されることが正確な結果を得る必要条件となる。これを実現するためには材料を撹拌する際に十分に気泡を除去するための脱泡機能を有する撹拌装置が必要であるが,これについては本申請予算で購入済みであり,一部実験を既に開始している。現在のところ,大きな問題は無く,計画の変更などもない。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は少額である。平成30年度は計画通り研究を実施していく。
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