真空ギャップの電極系においては、そのアプリケーションによって電界不平等性の極めて高いものもあり、その絶縁破壊特性は電極表面状態に影響すると考えられる。電極表面の汚損量の表面状態について放電が発生しやすい電界値の最も高い位置の分析だけでなく、その周囲まで分析範囲を拡げて表面分析を行った。そして、絶縁破壊電圧だけでなく、その放電の前駆現象である暗電流や微小な放電について調査した。電極の表面状態を改善する方法は,絶縁破壊を繰り返すスパークコンディショニングを用い、電極表面の汚損状態分布と真空ギャップの耐電圧の変化や暗電流の低減効果を評価した。電極表面の初期の汚損度合いの制御は、強アルカリ洗浄後に希釈した水溶性切削油の塗布と加熱乾燥による汚損の付着を行うことによって、その汚損を制御した。水溶性切削油の濃度を変えて実験を行った。真空中において繰り返し絶縁破壊試験を実施するとともに、同一真空環境下でXPSの表面分析を試験前と繰り返し絶縁破壊試験の途中で分析を行った。 真空中でのスパークコンディショニング過程において、電極表面の汚損分布は,電界が高い部分だけでなく周辺部についても汚損が減少していることが明らかとなった.比較的清浄な電極では,電界の強い部分の汚損が減少し,その後周辺部の汚損が減少するような傾向が見られ,周辺部もほとんど汚損が消滅していた。暗電流や微小放電については,放電回数が多くなるにつれて,暗電流の値が小さくなり,また,暗電流のばらつきも小さくなり,より安定した暗電流となった。これは,スパークコンディショニングにより汚損の除去をはじめとする電極の表面状態が変化するためと考えられる。暗電流の低下や微小放電の減少による暗電流の安定化により、真空ギャップの耐電圧は向上することが明らかとなった。
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