本研究では、マルチレベル電力変換器およびその変調方法に関する2つの特長に着目し、それぞれについての研究計画を進行してきた。以下では、2つの研究計画によって得られた研究成果とそれに関連して得られた研究成果についてまとめる。 1つめの研究計画は、高調波抑制による電流制御応答および位置・力制御応答の改善に関する検討である。これらのうち、実際には電流制御および力制御の応答改善について検討をおこなった。具体的には、各種パラメータを変更したときに制御応答がどのように改善されるかについて検討し、さらに電流制御と力制御それぞれにおける応答改善の関係についても検討をおこなった。 次に、2つめの研究計画は、等価的なサンプリング周波数向上による制御性能および安定性の向上に関する検討である。マルチレベル電力変換器と変調方式の組み合わせにより、制御システムの等価的なサンプリング周波数が2レベル電力変換器の場合に比べて向上すると考えられることが一般に知られている。それについて当グループの従来研究では離散時間モデルを用いた基礎的な理論検討をおこなっていたが、その理論検討の結果について実験による検証が十分にできないという状況が続いていた。本研究では、さらなる理論検討をおこなうとともに実験機における変調方式の実装を改善することにより、理論検討の結果を実験実証することができた。 さらに、上記2つの研究計画に関連し、マルチレベル電力変換器の導入による制御性能改善効果としてデッドタイム電圧誤差の抑制についても明らかにした。具体的にはマルチレベル電力変換器の回路方式と変調方式によりデッドタイム電圧誤差がどのように抑制されるかを数式により導出し、実験で検証した。これにより、2レベル電力変換器と比べて当該誤差を抑制することが可能であること、また、回路方式と変調方式によりその抑制効果が異なることを明らかにした。
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