研究課題/領域番号 |
17K06295
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
安藤 芳晃 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30323877)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | FDTD法 / VLF/LF帯大地電離圏導波管伝搬 / 電離圏電子密度同定 / 非構造メッシュ時間領域差分法 |
研究実績の概要 |
VLF/LF帯電磁波が大地-電離圏間を伝搬するシミュレーションを球座標系での3次元Finite Difference Time Domain (FDTD)法を基に開発している。計算精度向上の面では、平成30年度に開発した吸収境界条件の実装に続き、令和元年度は大地導電率を考慮するための表面インピーダンス法を実装し、正常に動作していることを確認した。この結果、計算精度のためには、大地導電率として陸地と海洋のデータを取り込む必要があることが分かった。また、シミュレーションの効率を上げるために、並列計算としてMessage Passing Interface (MPI)を用いた並列計算アルゴリズムを開発、実装した。並列計算手法としては(1) 解析領域分割、(2) 逆問題のための複数パラメタ同時解析が挙げられるが、この両者についての検討を行った。(1)解析領域分割については長距離伝搬では高効率な結果となるが、伝搬距離1000km程度であれば(2) 複数パラメタ同時解析の方が効率が良くなることが分かった。現在は、電離圏電子密度同定の逆問題解法を実装している。遺伝的アルゴリズムによる最適化を用いた逆問題開発手法の実装をほぼ終えており、令和2年5月に学会発表を予定している。 また、非構造メッシュにおける時間領域差分法をVLF/LF帯大地電離圏導波管伝搬に適用する準備を引き続き進めた。これまでに開発した技術を実装しつつ、令和元年度は精度を上げるために座標系を円筒座標系に変換している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討課題の検証を踏まえて3次元電離圏電子密度同定に取り組むところまで到達している。これは、これまでなされなかった初めてのことであり、電離圏物理解明の大きな一歩と言える。 また、非構造メッシュにもとづく時間領域差分法によるVLF/LF帯大地電離圏導波管伝搬解析手法を開発して、これまで考慮されなかった大地の地形を考慮した高精度シミュレーションが可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
3次元電離圏電子密度同定問題を検証し、同定できる解像度を検証する。また、実際の観測システムに展開するためには地上観測点がどの程度必要であるか、観測点数と効率的な配置についての検討を行う。非構造メッシュを用いてVLF/LF帯大地電離圏導波管伝搬解析を行ったときの山岳地形の影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで並列計算としてGPGPUを利用することを検討してきたが、複数パラメタ同時解析の並列計算ではCPUとメインメモリを用いたほうが効率的であることが分かった。CPUとして多数コアのものがAMD社からRyzen9シリーズとして2020年になる頃に発売となった。令和元年度はその準備を行い、購入とシステム開発を令和二年度に行う予定としている。
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