Very Low Frequency/Low Frequency(VLF/LF; 3-300kHz)帯の電磁波は、高度60-100kmのD層で反射する性質を有する。電離圏電子密度は、太陽光の日変化や季節変動に伴う規則的な変動以外に大規模な太陽フレアや地震等の影響で突発的電離圏擾乱が生じ、VLF/LF帯電磁波がD層で反射する際に電子密度の状態に大きく依存するため、異常伝搬となる。本研究ではこの性質を利用して、地上で観測される電界強度分布をもとに擾乱のパラメタである擾乱の大きさ、中心位置、高度・水平方向への広がりを同定するための電子密度推定手法を開発し、数値シミュレーションを用いて擾乱が発生した状況を想定して有効性を検証した。 電離圏の磁化プラズマの異方性、大地導伝率を考慮し、 GPGPUによる高精度かつ高速な3次元球座標系FDTDシミュレーションを順問題ソルバとしたGAを用いた電子密度推定手法を開発した。開発した推定手法の有効性の検証として、伝搬路上を中心に分布する擾乱を想定し、電離圏電子密度推定を行った。推定の結果、擾乱位置の高度と伝搬路方向、および電子密度分布の増加量、分布の高度および水平方向の広がりを精度よく同定できることが分かった。一方で、分布の伝搬路から直角な水平方向については誤差が生じた。この理由として、その方向については計算領域全体に擾乱が広がっていることが原因として挙げられる。 今回は地表面を密な観測点が存在するものとして同定を行ったが、推定できる現実的に設置可能な観測点数の検討が今後の課題となる。
|