研究課題/領域番号 |
17K06296
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
根尾 陽一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (50312674)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ホトカソード / アルカリ光電面 / バイアルカリ / コヒーレント効果 / スミスパーセル超放射 |
研究実績の概要 |
高量子効率,高速応答のホトカソード形成を目標として研究を実施した.コヒーレント効果を発現する為には,周波数0.1THzを仮定した場合,25psec以下に集群した電子パルス列を100psec間隔で形成する必要がある.またSP超放射を考えた場合,裏面入射の表面からの電子放出が望ましい.この仕様を実現する方法として,アルカリ金属光電面のピコ秒レーザー励起を選択した.アルカリ光電面として,①CsSb,②バイアルカリ(CsKSb)の2種類を試みた.実際の超放射実験装置を想定し,超高真空中でアンチモン膜,アルカリ金属合金化が可能な実験系を作製した.in-situで光電面を評価する為,405nmのCWレーザーを励起光,膜厚モニター用として使用した.清浄化したITO付きガラスに,10nm程度のアンチモンを蒸着により堆積する.次にアルカリ金属ディスペンサーからCs及びKを基板温度をパラメーターとしてSb表面に供給し合金化を行なった.この際,透過光強度と放出電流量をモニターする.①②の量子効率を比較した結果,②は最高10%に達した.しかし,合金化した後に放射電流の減少を抑制する方法を確立する必要があった.結論として形成時の基板温度の低温化が放射電流の安定化に効果がある事が分かり,現在更なるプロセスの改良を行なっている.また電子状態をモニター可能な様に,入射光にハロゲンランランプを用い,その吸収スペクトルより,Sb,kSb,CsKSbへと変化する際のバンド構造について評価をしている.また放射電流量子効率の波長依存性特性を分光光電により測定する予定である. プレバンチ電子線形成には,ピコ秒レーザーからのパルスを光路差により複数分割遅延したパルストレインを形成する.これに必要なハルスディレイ光路の作製を終了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高量子効率のアルカリ光電面形成は既に成功している.しかし形成後に長時間安定した状態を維持する事が困難である.Csの供給を停止した直後より放射電流の低下が始まり数時間で一桁程度低下する.これに対し,Csを供給する際の基板温度を低下する事で,劣化を抑制できる事を見出している.また,この原因を特定する為,吸収スペクトルの変化と,放射電流の波長依存性より基板内か表面どちらが問題になっているのかを明確にし,プロセスに反映させる必要があるため,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
アルカリ光電面の長寿命化以外は計画通りに進んでいる.パルストラッキング法を利用したパルス列形成,スミスパーセル超放射実験系におけるアルカリ光電面形成と電子銃マウントを同一チャンバー内で行なう機械設計は終了している.その他,評価に必要な装置の準備は予定通りに終了している.今後は,アルカリ光電面が未完成であっても,短時間であれば評価可能,また再形成が可能である為,超放射実験とアルカリ光電面のプロセス確立を平行して行なっていく予定である.
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