研究課題/領域番号 |
17K06298
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
木村 高志 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60225042)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマイオンプロセス / パルスプラズマ / ダイヤモンドライクカ-ボン / 窒素ドープ / 導電性 / 対向タ-ゲット方式 |
研究実績の概要 |
高密度パルスプラズマ生成技術を基礎とするプラズマイオン注入システムを用いて機能性フィルムを作製することを主たる研究目的としている。 高硬度, 低摩擦係数の特徴を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜は、機械部品の保護膜への応用、生体親和性を活かしたステントへのコ-ティング等の医療への応用など様々な分野で応用が進められているが、絶縁性のDLC膜に電気伝導性を付加することにより用途のさらなる拡大が期待できる。前年で行った電気的抵抗の高いDLC膜への窒素イオン注入によって電気伝導性を付加する研究では70-80mΩcmの抵抗率まで実現することができた。さらに、電気伝導性を高めるため、DLC成膜と窒素プラズマによる窒素イオン注入を交互に繰り返す多層化をはかった。炭化水素ガス(トルエン)プラズマによるDLC作成時間ならびに窒素イオン注入時間をパラメータとして実験を行った。その結果、10-30mΩcmの抵抗率まで減少することができ、電気伝導性の改善を実現できた。 さらに、本研究では、摺動部品などの機械部品や工具類への保護膜に利用されている金属窒化物の膜特性をプラズマイオンプロセスでの作成により改善することも行っている。本年度は、異なる面積のチタンとカーボンをターゲットとして用いた対向型スパッタリング用パルス放電プラズマにより、炭窒化チタン(TiCN)膜を作成した。この方式で作成したTiCN膜は、カーボンターゲットの面積が全体のターゲット面積に対し17%の場合、硬度は最大33GPaに達するとともに、摩擦係数もおよそ0.17となった。さらに、カーボンターゲットの面積を増大した場合は、摩擦係数は0.08程度、硬度は15GPa程度まで緩やかに減少していった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気的抵抗の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜への窒素イオン注入による電気伝導性の付加に関する研究で更なる電気伝導性の改善が実現できた。 カーボンとチタンのターゲットを用いた対向ターゲット型スパッタリング用パルス放電プラズマで作成したTiCN膜は相対的に高硬度かつ低摩擦係数の特性を持ち、本方式で硬質膜の作成が実現可能であることを示唆できた。
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今後の研究の推進方策 |
高密度パルスプラズマ生成を基盤にしたプラズマイオンプロセスでの機能性材料の作成を行う。正パルスバイアスも印加できるバイポ-ラ型イオン注入システムを組み込んだ材料プロセス方式を用いる。この方式を用いて基板温度の制御を行いながら、耐摩耗性、耐腐食性、熱安定性に優れた絶縁性Si-DLCに導電性を付加することなど機能性材料を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会への参加を都合により見送ったことに加え、作成した材料の分析にかかわる費用が次年度の支払いになったため「次年度使用額」が生じた。 2019年度に請求した助成金と平成30年度に生じた「次年度使用額」とをあわせて 電極材料費や真空装置部品や真空配管部品を購入する計画を立てている。
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