研究課題
高密度パルスプラズマ生成技術を基礎とするプラズマイオン注入システムを用いて機能性フィルムを作製することを主たる研究目的としている。本年度は、高密度パルスプラズマ生成法の一つである高出力パルスマグネトロンスパッタシステムとプラズマイオン注入システムとを組み合わせた方式で導電性シリコン含有ダイヤモンドライクカ―ボン(DLC)膜の作製を行った。DLC膜は、高硬度、低摩擦係数の特性を活かした機械部品の保護膜への応用、生体親和性を活かしたステント等の医療への応用など様々な分野で応用が進められている。シリコンを含有することで基材との密着性、耐熱性の改善が期待でき、さらに、電気伝導性を付加することにより帯電防止膜、電極など用途の拡大が期待できる。導電性シリコン含有DLC膜の作製はプラズマ援用化学気相成長法と物理気相成長法の両方に基づく。シリコン原料ガスであるテトラメチルシランガスの流量によりシリコン含有率を制御し、基材へ印加する負のパルス電圧の大きさにより内部応力の緩和や膜形成時の基材温度の制御を行った。その結果、シリコン含有率の増加に伴い抵抗率は3Ωcm から380Ωcmまで増加するのだが、4.3%から11%までのシリコン含有率の範囲で10-15GPaの高い硬度を保ちながらシリコン含有DLC膜の導電性を実現することができた。さらに、本研究では、摺動部品などの機械部品や工具類への保護膜に利用されている金属窒化物の膜特性をプラズマイオンプロセスにより改善することを行っている。チタンとシリコンをターゲットとして用いた対向型スパッタリング用パルス放電プラズマにより、TiSiN膜を作製した。この方式で作製したTiSiN膜は、膜中のシリコン含有率が4-5%の場合、硬度は最大43GPaに達するとともに、摩擦係数はおよそ0.4程度と低い値を示した。
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Diamond and Related Materials
巻: 101 ページ: 101735 (8ページ)
https://doi.org/10.1016/j.diamond.2019.107635