(1) 主応力分解応力モデルの比較 前年度まで検討した応力モデルは、磁界方向に対する応力の効果を評価するのに適しているが、応力方向およびその直角方向における磁気特性への影響の評価は正確でない。また、ヒステリシス損への影響の評価については精度に欠ける。そこで、応力の方向とその直角方向に分解して、磁気特性への影響を記述する主応力分解モデルを検討した。磁束密度ベクトルを応力方向と直角方向に分解し、それぞれの方向で応力の効果を評価する。圧縮応力を印加する場合、直角方向に無応力として評価すると、磁気特性への影響が不正確になるが、直角方向には引っ張り応力に換算することで、直角方向への応力の効果を評価できることを数値モデルにより示した。ヒステリシス損についても応力の効果の評価精度を改善できた。 (2) 応力印加磁気測定の改善 応力を印加する圧電フィルムについて、2枚並列に接着することで応力印加を効果的に行うことが可能になり、磁気特性の応力依存性測定の精度を改善した。 (3) 磁区モデルの改善 高磁束密度領域で収束性および精度が低下する問題を解決するために磁壁移動と磁化回転に基づく磁気エネルギー極小化を2段階で行う手法を開発した。まず、中磁束密度までの範囲において、従来モデルと磁壁移動のみによるモデルの計算結果がほぼ一致することを確認した。その後に磁化回転を考慮して、再度エネルギー極小化を行うことで、高磁束密度領域における収束性を改善した。
|