研究テーマ「近似的な固有ベクトル推定による疎行列線形反復解法の高速化」において,①固有ベクトル推定による反復解法の高速化においてこれまで加法シュワルツ型前処理を採用してきた.これに対して乗法シュワルツ型前処理による誤差修正について検討を行った.②非線形材料を含む有限要素解析に対する誤差修正法の応用について検討しその有用性を確認した.③サイズを可能な限り小さくとったサンプル問題に対して特異値分解または固有値分解を行い,得られたベクトルと問題の物理的背景との対応関係を観察することによって,物理的観点から固有ベクトル推定を行うアプローチについて検討を行った.導電率が急激に変化する超電導コイルの解析などにおいて本アプローチの高い有効性が確認され,また代数マルチグリッド法を使用する研究に進展した. 研究テーマ「辺要素電磁界解析への幾何的ブロック対角前処理法の応用」について,幾何的ブロック対角前処理法の有効性に関する理論的・数値的検討を行った.基本的な条件の2次元解析に幾何的ブロック対角前処理を適用した際の行列の固有値・固有ベクトルの全てを理論的に解明した.3次元辺要素解析の場合について幾何的ブロック対角前処理法が理想的な収束性改善効果を示すことを固有値解析によって明らかにした. 電磁場方程式のモデル縮約について,① CLN法の収束性がクリロフ部分空間法におけるCGW法の収束性に対応することに着目し,収束性を決定する主要な要因である条件数について,展開点を使用する場合を含めて上限を明確に与えた.② CLN法がCGW法つまりCG法の一種の拡張であることに着目し,CG法と同等の有用性を持つCR法に対応するCLN法の別バージョンを開発した.
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