超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルは,車両の推進,浮上,案内を実現するための設備である。実運用では膨大な数の地上コイルが使用されることから,効率的な絶縁劣化診断技術が必要とされる。本研究では,高電圧が印加される推進コイルに着目し,絶縁劣化の予兆現象である部分放電を走行中車両から検出する電磁波センシングシステムの開発を進めている。これにより,絶縁劣化箇所を有する推進コイルを走行中車両から特定することを目指している。 本年度は車載型電磁波センシングシステムのアンテナ部を小型化し,部分放電放射電磁波測定,周波数解析,部分放電の位置特定を実施した。なお,部分放電は独自に開発した模擬推進コイルで発生させた。また,独自に開発した模擬浮上・案内コイルも本実験において使用した。 主な結果は以下の(1),(2)である。(1) 電磁波センシングシステムを試験台車に搭載し,部分放電の検出およびその発生位置が特定できることを示した。(2) 高速走行させた試験台車から部分放電が検出できることを示した。 上記の結果(1)を電気電子工学会(IEEE: The Institute of Electrical and Electronics Engineers)の誘電絶縁部門(DEIS: Dielectrics and Electrical Insulation Society)主催の電気絶縁に関する国際会議(2019 IEEE Electrical Insulation Conference,2019年6月,カナダ・カルガリー)で発表した。結果(2)を2020 IEEE EIC(2020年6月,バーチャル国際会議)にて発表する予定である。 事業期間全体を通じて,「超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルの絶縁劣化診断技術の国際標準化」に貢献できる成果が得られたと考えている。
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