本研究では,低鉄損磁性材料を用いた軽量・高効率モータの開発支援技術の構築を目的として,薄帯磁性材料の巻鉄心カットコアを利用したステータモジュール型ラジアルバーニアモータの開発を行った。超急冷法で製作される薄帯状の低鉄損磁性材料は,その低い加工性やモータ形状での熱処理の困難性から,現状の積層型ラジアルモータコアに置き換えることが難しい実状がある。そこで,薄帯磁性材料を有効活用できる巻鉄心カットコア構造での加工・組み立てを実現するための技術開発と実証に向けての検討を行った。 具体的には,①応力依存磁気特性の測定結果を基に応力下磁気特性のデータベース形モデリングを開発した。数値モデルを独自開発の有限要素解析コードに組み込み,巻鉄心の磁気特性の異方性を考慮するとで,モータの鉄損評価の精度を向上させた。最終年度には,エアギャップ長等の鉄心の加工公差がモータ特性に与える影響について検証し最終仕様を決定した。また,②低応力加工技術の開発のため,アモルファス積層試料に対する高周波励磁が可能な磁気試験器を製作し,形状や径を変えた巻鉄心試料ならびに短冊状アモルファスシートを接着積層した試料を用いて,曲げや接着により加わる応力が磁気特性に及ぼす影響ならびに熱処理効果を評価した。各種整形条件での残留応力の影響や熱処理の有無による磁気特性の変化を明らかにした。アモルファスシートを面接着すると占積率が大きく低下することから,熱処理後に側面接着することが有効であることを明らかにした。 さらに,③巻鉄心や単板並びに積層試料に対して応力下・磁場中熱処理を行う前後の磁気特性を評価し,磁気異方性の発現ならびに磁気特性の改善方法を明らかにした。④試作機は,U字型ステータモジュールの試作段階で,加工組立後の磁気特性を評価中である。モータとしての特性評価と解析結果との比較は今後の課題である。
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