研究課題/領域番号 |
17K06309
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
甲斐 祐一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (50595436)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 応力 / ベクトル磁気特性 / 磁区構造 / 鉄心材料 |
研究実績の概要 |
近年,電気自動車や産業機器用モータには高効率化が要求されており,鉄心材料の低損失化技術が必要不可欠である。本研究課題では,応力とベクトル磁気特性の因果関係を解明へ向けてミクロな観点から詳細な分析を行うため,磁気光学効果を用いた任意応力ベクトル磁区評価システムを開発し,応力及び励磁下におけるモータ鉄心材料のベクトル磁区構造を観察する。 本年度は,任意応力・励磁下における鉄心材料の磁区構造を観察するために磁気光学効果を用いた任意応力ベクトル磁区評価システムを開発することが目的である。すでに,当研究室には面内応力印加機構と任意励磁部分を備えた応力ベクトル磁気特性評価システムが設置されている。そこで,今年度は磁気光学効果を用いた磁区観察装置を導入し,これまでのシステムの改良を行った。その結果,任意応力・磁束条件下における鉄心材料の磁区構造を観察できることを確認した。さらに,任意応力印加のためには4方向から応力を印加する必要があるが,ロードセルを用いて外部応力を測定し,目標の応力を印加する手法を提案した。また,巻線からの漏れ磁束が磁区観察領域の磁区構造へ及ぼす影響について検討し,従来の巻線配置でも磁区観察が十分行えることを確認した。 今後は,モータに使用される無方向性電磁鋼板を用いて,応力の大きさや応力角度を変化させた場合のベクトル磁区観察を行い,磁区構造の分析及び磁区の挙動を明らかにする。さらに,磁区もベクトル量として捉えることに着目し,応力下における磁束密度ベクトル,磁界強度ベクトル,ベクトル磁区を同時に測定し,これらの物理量を視覚的かつ磁気現象を正確に理解できるような新しい表現法を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は任意応力・励磁下における鉄心材料の磁区構造を観察するために磁気光学効果を用いた任意応力ベクトル磁区評価システムを開発することが目的である。 本システムの主要部分は,①面内任意応力印加機構,②任意励磁部分,③磁区観察部分である。研究代表者らは,①面内応力印加機構と②任意励磁部分を備えた応力ベクトル磁気特性評価システムを開発しており,本年度は③磁区観察部分について本システムの改良を行った。そこで,今年度は磁気光学効果を用いた磁区観察装置を購入し,これまでの装置と組み合わせ調整を行った。予備実験段階ではあるが,任意応力・磁束条件下における鉄心材料の磁区構造評価が可能であることを確認した。さらに,磁区構造装置を組み合わせたことによって,任意応力の評価法や励磁方法もこれまでの方法と異なるためこれらについて検討を行った。任意応力印加のためには,4方向から応力を印加する必要があるが,ロードセルを用いて外部応力を測定し,目標の応力を印加する手法を提案した。また,巻線からの漏れ磁束が磁区観察領域の磁区構造へ及ぼす影響について検討したが,従来の巻線配置でも磁区観察が十分行えることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は,モータに使用される無方向性電磁鋼板を用いて,応力の大きさや応力角度を変化させた場合のベクトル磁区観察を行い,磁区構造の分析及び磁区の挙動を明らかにする。また,同時に磁束密度および磁界強度ベクトルを測定することによって任意応力や磁束条件下における鉄損も評価し,磁区構造と鉄損の関係を明らかにし,応力を利用したモータ鉄心材料の低損失要因について詳細な分析を行う。実際に観察される磁区構造は二次もしくは三次元構造を有するため,磁区構造もベクトル量として取り扱う必要があると考えられる。今回は磁区もベクトル量として捉えることに着目し,応力下における磁束密度ベクトル,磁界強度ベクトル,ベクトル磁区を同時に測定し,これらの物理量を視覚的かつ磁気現象を正確に理解できるような新しい表現法を提案する。 さらに,実用的な立場からのモータ鉄心材料の磁区制御を目指し,改良円筒磁束収束板を用いた誘導加熱コイルを新たに作製及び誘導加熱処理装置を導入し,開発したシステムを用いて,誘導加熱処理により鉄心材料の損失が低減する最適磁区構造についても検討する。これまでの成果によって誘導加熱処理を施すことで,鉄心材料に応力効果を生じさせることができており,そのときの誘導加熱コイルを改良した加熱コイル(改良型円筒型磁束収束板)を用いた誘導加熱処理法を新たに提案する。改良円筒型磁束収束板では渦電流密度が向上しており,より短時間で応力効果を得ることができるものと考えられる。平成31年度に加熱コイル及び加熱装置を導入し,誘導加熱処理した鉄心材料の磁区ベクトル構造を観察し,損失が低減する最適磁区構造について検討する。
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