最終年度は主に,磁界放射を低減した2相経皮トランスの作成と磁界強度の測定と体組織や経皮トランス周囲の絶縁パッケージ厚さを変えた場合の漏れ電流の解析を行った.小型2相経皮トランスを試作し,送電コイル間の距離,負荷抵抗,受電電力を変化させたときの,経皮トランスから3 m位置の磁界強度を測定した.測定には新たに購入した磁界測定アンテナとスペクトラムアナライザを用い,3mの距離に換算してからCISPR11の規制値を比較した.その結果,経皮トランスを1相から2相に変えることで,磁界強度は,59.9dBμA/mから43.1dBμA/mまで低下した.また,経皮トランス周囲の絶縁パッケージ厚さを変えた場合の漏れ電流の解析も行った.経皮トランスの絶縁皮膜厚さが薄いと,容量結合が生じ高周波漏れ電流が大きくなることが予想される.絶縁皮膜厚さを0.05mm~0.8mmまで変えたときの,高周波漏れ電流を調べた.その結果,0.05mmの場合は15mAを超える電流が流れた.0.8mmにすると7mAまで低下した(ただし,人体は1kΩの抵抗と仮定). さらには3年間を通して,経皮トランス周辺の生体組織の等価回路の作成や,経皮トランス,直流電源,インバータ回路,整流回路,負荷抵抗,人体まで含めた「経皮電力伝送システム」とした場合の高周波漏れ電流の実測や,電気回路シミュレータによる「経皮電力伝送システムの等価回路」を用いた漏れ電流計算も行い,経皮トランスと人体との間の寄生容量などを含めた正確な等価回路を作成することより,高周波漏れ電流が電気回路シミュレータ上で計算できることを確認した.これらの成果により,今まで見えていなかった経皮電力伝送システムから周辺に漏れている電流や電流ルートが推測できるようになり,今後,製品化をするに当たって必要となる重要な成果を得ることができた.
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