研究課題/領域番号 |
17K06314
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
安田 彰 法政大学, 理工学部, 教授 (30339501)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | デジタル直接駆動 / マルチコイルモータ / コイル分割 / 高トルク化 / 低電圧化 / 低トルク変動 / モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,我々が提案している従来のブラシレスモータの1巻線を複数に分割したマルチコイルモータにおいて,最大出力向上,高回転化,コイルばらつきによるトルク変動低減,ロータの機械的アンバランスによる振動低減を目的とする.この実現のため以下の研究を行った. 従来の多相集中巻モータの各コイルを複数に分割し,さらに全ての相のコイルを個別に駆動したデジタル直接駆動モータ(DDDMO)の基本特性の測定: 我々の提案したDDDMOでは,3相の各コイルを複数に分割しているが,これらのコイルをさらに分割する手法を提案した.この場合,各コイルには物理的な位置が異なるスロットが存在する.このようなモータとしてインホイールモータを選定し,電気的,機械的特性の測定を行った.さらに,各スロットを個別に駆動した際の特性を測定することで,各コイルを個別駆動した際の特性を再現するモデルの作成を行った. 従来我々が提案しているコイルの駆動方法を拡張したコイル選択方法の提案:従来のDDDMOでは,各コイルの選択の有無をUVWの各コイルの使用の有無を変数とするベクトルフィルタを用いて選択しており,V,W相を逆相駆動することによるU相駆動と等価の磁束を生成するような駆動方法は用いていない.そこで,このようなこれまで用いられていなかった駆動パターンをも含めた選択手法を提案し,正常にモータを回転させることが出来ることをシミュレーションで確認した. U,V,W各相を構成する複数のコイルをそれぞれ個別に駆動するDDDMO駆動方式の提案: 上記の各相のコイルを個別に駆動する方法を提案した.これにより,各相のコイル数は相を構成するコイル数倍に増え出力トルクを増大でき,1コイルのみを駆動した場合の出力トルクを低減できる.低出力トルク時のトルク変動低減や効率向上も図れる.また,コイルのばらつきの影響をさらに低減できることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たなコイル分割方法およびこれらの駆動方法を提案し,その基本特性をシミュレーションにより確認した.また,インホイールモータの実機を用いてマルチコイルモータとしてのモデルパラメータを測定し,シミュレーションにこれを活用している. V,W相を逆相駆動することによるU相駆動と等価の磁束を生成するような駆動方法による制御では,コイルのばらつきの影響を低減するため,コイルの誤差の影響を低減する全相の全てのコイルを対象としたノイズシェーピング・ダイナミック・エレメントマッチング法(NSDEM)が必要となる.今回の研究で従来と同様の方法で全コイルに対するNSDEMを構成した場合,NSDEMを構成する内部ループの安定性が損なわれる条件が存在することが分かった.これは,各相のサブコイルも分割するため,総コイル数が大幅に増大したためである.この点は想定されていた点でありこれを解決する方法を30年度では検討する必要がある. その他,FPGAを使った実装試作については,現在提案手法を用いた駆動系回路の設計を行っている.プリント基板を含めた実装において必要な部品の納期遅れのため若干遅れが出ている.
|
今後の研究の推進方策 |
上述したように,全相のコイルを対象とした場合,コイル数が大幅に増加し,NSDEMの内部ループの安定性が損なわれる条件があることが分かった.モータの駆動では回転磁界を発生させる必要がある.このため,コイルの選択はロータの位置による影響を受け,現在これを考慮した制御方法を提案し用いている.一方,このように使用するコイルを選択した場合,コイルの選択に偏りが生じてしまう場合がある.この偏りにより,ループの安定性が損なわれていることが29年度の検討で判明した.今後は,この偏りの影響を低減できるアルゴリズムを提案することにより,この問題の解決を図る予定である. FPGAを用いた実装については,今後外部への実装依頼および研究補助員の増員により期間短縮させる予定を立てている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
FPGAを用いた実装回路基板の作成が遅れ,これに伴う支出を平成30年に行うこととなった.FPGAを用いた実装回路基板に関連する支出は平成30年度に行う.
|