研究課題/領域番号 |
17K06319
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
中尾 一成 福井工業大学, 工学部, 教授 (50586469)
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研究分担者 |
木村 紀之 大阪工業大学, 工学部, 教授 (00144428)
大村 直人 神戸大学, 工学研究科, 教授 (50223954)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 撹拌 / 混合 / 誘導加熱 / 伝熱特性 / 孤立混合領域 / 非接触給電 |
研究実績の概要 |
(1)IH撹拌機の翼の伝熱特性 撹拌伝熱操作として、一般的に槽外にジャケットを槽内に螺旋状のコイルを設置する方法がある。槽外部からの伝熱に関しては研究事例が多い。本研究では、提案の扁平型誘導加熱コイルを縦型撹拌翼に挟み込んだ内部誘導加熱撹拌翼周りの熱伝達特性を把握する実験を行った。その結果、j因子のReに対するべき指数は0.38であり、リボン翼のジャケット伝熱の1/3に近い。323< Re <4000の範囲では槽外加熱方式と比較して本方式の方が優れていることが分かった。 (2)IH撹拌翼による非定常混合特性 撹拌槽では通常乱流状態で混合を行うことが効率的であるが、混合する物質が剪断に対して脆弱である場合や流体の粘性が高い場合には、層流状態での混合操作が必要となる。撹拌槽内の層流混合場では、対流によって物質移動が迅速に行われる通常の撹拌混合領域以外に、その領域との境界面において拡散移動による物質交換が支配的な孤立混合領域(IMR)が出現し、このIMRの存在により槽内全体の均一混合が妨げられるため、IMRの除去に関する研究は多い。本研究では、電磁誘導による内部誘導加熱攪拌翼により、高粘性流体の混合促進を目指した。低Reynolds数域での撹拌操作を行い、IMRの形状変化を可視化実験により観察した。その結果、IMR消滅時間は従来の1680 s から970 sと大幅に短縮された。これは、槽内の流動を不安定化することで物質移動が促進されたためと考えられる。 (3)IH撹拌機の非接触給電特性・加熱特性 容器上部に非接触給電用コイル対を搭載したトランスレス電磁界共振型非接触給電方式を提案した。その結果、正確な電力・熱収支からトランスレス化を実現した上で加熱効率67 %を達成した。さらに非接触給電用コイル対の73~85 %の大幅な軽量化を実現し実用性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
福井工大、神戸大、大阪工大間および連携研究員(阪大平田 名誉教授、関西電力 中尾研究員)とのコラボレーションによる電気、機械、化学工学などの異分野知識の融合・相乗効果ならびに早急な装置の立ち上げにより研究が加速された。その結果、誘導加熱撹拌翼の伝熱特性の把握、孤立混合領域(IMR)の消滅の観察および非接触給電の給電・加熱効率の取得を通じて電磁誘導加熱撹拌翼に関する貴重な基本データが取得され、学会発表6件、特許出願1件の形で多くの成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
翼の伝熱に関して平成29年度はグリセリン水溶液による実験を行ったが、平成30年度は水を被加熱媒体とした実験を行う。また、伝熱面積拡大、伝熱特性向上のため誘導加熱コイルを縦型矩形翼の外枠に設置したIH撹拌翼を製作し実験を行い、昨年度と同様な翼-溶液間伝熱特性を把握するとともに、撹拌翼の誘導加熱時における熱応答性(時定数)に関するデータを取得する。さらに、本システムの応用としての晶析操作を可能とする外部冷却容器を製作し予備実験を行う。 内部翼加熱撹拌によるIMRの除去に関して、高粘性流体を用いた層流混合場での撹拌操作実験を継続し、IMR除去性能が優れているという基本データを蓄積するとともに、その混合促進メカニズムについて考察する。 非接触給電方式に関しては、より一層のコンパクト化、高効率化を目指した円筒形の構成を提案し、エネルギー収支を把握しつつ、その給電効率、加熱効率を把握し、昨年度得られた結果と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
約300円が繰り越しとなったが本年度にて消化する。これは、本年度の計画にほとんど影響を及ぼさない。
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