研究実績の概要 |
工業的な撹拌加熱操作は一般的に熱媒体を用いて外部撹拌槽や内部コイルの壁面を介して行われる。新提案は回転する翼を誘導加熱でき被加熱物を内部から加熱可能である。ゆえに、溶液との伝熱特性に優れ、高熱応答性を期待できる。我々は、水、60wt%及び80wt%グリセリン水溶液を用いて新しく開発された電磁誘導加熱撹拌機(Induction Heating Mixing Impeller:IHMI)の熱伝達特性と熱時定数を調べた。実験装置は主に電磁誘導コイルを内蔵した電磁誘導撹拌翼と、それを装備した撹拌槽や電源系から構成される。電磁誘導コイルは5巻きの平板状銅コイル、撹拌翼は、□150mm×14mmtの2枚のステンレス製の翼板で作られている。電磁誘導コイルは、絶縁板を介して2枚の翼板に挟まれた半密閉型構成である。撹拌翼と溶液間の熱伝達率hは次式から求めた。W=hAΔT(W:発熱量,A:伝熱面積,ΔT:翼と溶液の平均温度差)、さらにヌセルト数Nuの形、さらにはj因子の形で整理された。撹拌翼と溶液間の伝熱特性 jIHMIは、槽壁と溶液間のjoの2倍以上と優れた伝熱特性を示した。また、時定数は6~25sであり、hに反比例し、ΔTは1次遅れを示した。時定数は外部槽壁加熱と比較して1ケタ小さいと推定された。 誘導加熱撹拌用途の一つとして、高粘度流体の層流域の撹拌混合に関して、外部通電加熱とタービン翼誘導加熱時のグリセリン水溶液の孤立混合領域IMRの消滅時間を比較した。同時に、レーザーシート光照射にてウラニン脱色反応を利用してIMR 断面の脱色過程を観察した。翼投入電力200 W、Re= 27の条件における内部翼加熱とShahirudin らのジャケット式加熱のIMR消滅時間はそれぞれ970 s、1680 sであり大幅に短縮された。層流域において孤立混合領域の低減に効果があることが分かった。
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