研究課題/領域番号 |
17K06325
|
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
大森 英樹 大阪工業大学, 工学部, 教授 (20613681)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | パワーエレクトロニクス / 非接触 / ワイヤレス / インバータ / コンバータ / V2H / EV / 充電 |
研究実績の概要 |
自然エネルギー発電や負荷の平準化システムに必要な蓄電池としてEVやPHVを利用するV2H(Vehicle to Home)やV2C(Vehicle to Community)が注目されているが、ワイヤレスでこれを実現すると、利便性の向上に加え蓄電池を最大利用することが期待できる。研究者は近年シンプルで低コストのシングルエンデッド式のワイヤレスV2Hシステムを開発したが、V2Cのように複数のEVやPHVと平準化システムを相互融通すると制御が複雑になる。そこでシームレス双方向伝送で疑似並列接続できるシングルエンデッド式ワイヤレス給電装置を開発し、複雑な伝送制御なしで相互融通できる新しいワイヤレスV2H/V2Cシステムを低コストに実現することに取り組んでいる。 平成29年度はスイッチング素子の逆方向電流が電源に回生することを利用して受電電力を取り出すシングルエンデッドインバータの双方向化回路構成を確定し、双方のインバータを同時動作させたときにそれぞれのコイルの共振電圧で自己同期させることで、ソフトスイッチングを確保すると同時にインバータ相互が同期状態に引き込まれて安定性が確保される現象や、疑似並列動作としての電力流にスイッチング素子の導通時間が与える影響、パワー回路定数と動作特性の関係などをシミュレーション解析した。さらに実働機を試作し、改良したワイヤレス給電評価設備で検証を行った結果、これまでの3倍の3kW級ハイパワー伝送を得るとともに制御や設計手法を確立する基礎データを整えた。 また、国際規格であるIECやSAEに準拠した高周波電力伝送を実現するために、高周波用に改良したスイッチング評価装置によって、新しいVMOS構造の1700V80AのSiC-MOSFETを評価した結果、従来より約1.5倍の高耐圧でありながら導通抵抗の増大がなく、高効率・ハイパワーが得られることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年当初計画の研究項目である双方向化回路構成、現象、動作特性などのシミュレーション解析、実働機の試作とワイヤレス給電評価設備での検証、基礎データ整備、新しいSiC-MOSFETの評価などをすべて実施して、目標の性能を確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度に得た基礎データを基に制御手法を確立し、制御回路構成を確定する。また、パワー回路定数に関わる基礎データを基に設計手法を確立する。 さらに、SiC-MOSFET適用のために必要な評価技術として、保有している損失評価手法に加えてスイッチング耐量評価技術を確立する。評価装置は現有の波形測定装置に加え評価ボードを作成する。ワイヤレス給電装置の原理モデル試作を行い、動作安定性、信頼性,伝送効率など,実用化に関わる基本課題の抽出・対策を行って装置の基礎技術を完成させる。 平成31年度はシームレス双方向伝送で疑似並列接続できるワイヤレスV2Xシステムとして複数のEVやPHVと平準化システムのDCバスを接続して運用した場合の自律協調運転や安定性などについて、模擬的実験によって検証し、運用のための基礎技術を確立する。ワイヤレスV2Xシステムとしての試作を行うとともに,発電平準化や負荷平準化の運用,また自律協調運転による安定性など応用上の課題を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年2月および3月に購入予定の物品(消耗品)70,288円が年度内に納入処理できなかったため、平成30年度使用額になりました。 この平成30年度使用額の物品費70,288円と平成30年度当初使用計画の物品費700,000円、旅費500,000円は計画通り執行します。
|