研究課題/領域番号 |
17K06326
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
大山 和宏 福岡工業大学, 工学部, 教授 (60320321)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 風力発電システム / キャパシタレスAC-AC変換機 / スイッチトリラクタンス発電機 |
研究実績の概要 |
本研究課題を実施する前に、多極永久磁石同期発電機(多極PMSG)と昇圧チョッパ回路の組み合わせによるギアレス可変速風力発電システム(VSWPGS)を提案し、その性能及び有用性を実証してきた。しかし多極PMSGに使用する永久磁石の材料となるレアアースの価格高騰によるコスト増が懸念されている。また系統と多極PMSGの間に設置され、系統連系と多極PMSGの可変速制御の役割を担っているAC-AC電力変換装置が、キャパシタ(電解コンデンサ)を有しているため、定期的なメンテナンスを必要とする。そこで本研究課題は、レアアースを用いないスイッチトリラクタンス発電機(SRG)とSRGに特化したキャパシタレスAC-AC電力変換装置の組合せによるギアレスVSWPGSを提案し、シミュレーション及び試作機を用いる実機試験 により、その性能及び有用性を検証することを目的としている。本研究課題により先のPMSGによるVSWPGSと同レベルの発電効率を有するSRGによるVSWPGSの実現が期待できる。 2019年度は、SRGの発電特性とマッチングする風車タービンの設計方法を検討した。具体的には、有限要素法流体解析により、風車タービンブレードの抗力係数と揚力係数の算出を行い、それらの実測値との比較を行うことにより解析精度を確認した。現在のところ、得られる抗力係数と揚力係数を用いる翼素運動量理論による風車特性の計算を行っている。風車特性の計算値が実測値と一致すれば、新たに設計するSRGの発電特性とのマッチングを図りつつ、風車タービンブレードの形状を最適化できる。 比較対象(ベンチマーク)として位置付けている多極PMSGによるVSWPGS(従来方式)を施工設置し、実風速など各諸量の観測を行った。従来方式で観測される各諸量は、設計する風車タービン及びSRGの特性計算と実風速に対するエミュレーションに活用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SRGの発電特性と風車タービンの出力特性のマッチングを図るための設計方法を検討した。SRGの発電特性は、有限要素法(FEM)静磁場解析で得られるSRGモデルと制御系まで考慮した過渡シミュレーションによって算出した。一方、風車タービンの出力特性は、FEM流体解析で得られるブレードの抗力係数と揚力係数を用いて、翼素運動量理論に基づく定常解析を行うことによって算出した。 現在のところ、風車特性に関して、先行研究で公知となっている実測値との比較を行うことによる計算精度の確認をしている最中である。そのためブレード形状に関しては、多くの先行研究において風洞実験による実測値が公開されているNACAタイプのブレード形状を解析対象とした。風車特性の計算値が実測値と一致することが保証されれば、新たに設計するSRGの発電特性とのマッチングを図りつつ、風車タービンブレードの形状を最適化できる。 比較対象(ベンチマーク)として位置付けている多極PMSGによるVSWPGS(従来方式)を施工設置し、発電時の実風速など各諸量の観測を行った。従来方式で観測される各諸量は、設計する風車タービン及びSRGの特性計算と実風速に対するエミュレーションに活用する予定である。 2018年8月下旬に、落雷の影響により従来方式の故障が発生したので、その故障の原因究明と対策を行っている。現在のところ、故障個所は明らかになっているが、自然災害による故障ということで保険適用とするために、保険会社への申請手続きに時間を要しており、半年近く復旧していない。
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今後の研究の推進方策 |
アキシャルギャップ型SRGとラジアルギャップ型SRGのどちらがVSWPGSに適しているのかを見極め、適している型のSRGの詳細設計を風車タービンの出力特性とのマッチングを図りつつ、更なる最適化を図る。同時に、風車タービンブレード形状の最適化を図る。最終的には1kW級の試作機を試作する。 試作する高効率SRGとキャパシタレスAC-AC変換器を組み合わせるVSWPGSを試作し、実機試験を実施する。具体的には、2018年度の施工設置した1kW小型VSWPGSでモニターした風速データを用いて、申請者が開発した翼素運動量理論に基づく風車エミュレータ(WTE)を用いて研究室内にて実機試験を行い、様々な風況に対する性能評価を先行して行う。 基本的な性能評価を終えたら、従来方式が設置されてる近くにてフィールド試験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で予定している風車タービンとスイッチトリラクタンス発電機の試作費として使用する。
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