研究課題/領域番号 |
17K06330
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
橋本 好幸 神戸市立工業高等専門学校, 電子工学科, 教授 (20270308)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 同軸パルスパワー装置 / 抵抗分圧器 / TEMアンテナ |
研究実績の概要 |
本年の本研究の目的は、広帯域マイクロ波をTEMアンテナを用いて発生させるために、同軸パルスパワー装置(-360kV, 280J)を大気圧下で動作可能なように改修を行うことと、その動作試験を行うことである。また、並行して広帯域マイクロ波を発生させるためのTEMアンテナの設計である。 まず、真空中で電子ビームを発生するために使用していた同軸パルスパワー装置の出力インターフェースを大気圧下で動作可能なようにダイオード部の形状の修正や、TEMアンテナまでの出力伝送部の追加を行った。 次に、同軸パルスパワー装置の出力電圧はこれまで容量分圧器のみで測定したいたが、測定精度を増すために、出力部に新たに抵抗分圧器を設置することにした。また、出力電流の測定にはシャント抵抗を用いていたが、より出力部に近い位置で電流を測定するために、ロゴスキーコイルを新たに追加することにした。これらの測定器の設計を行った。 さらに、同軸パルスパワー装置の制御系において、高電圧トリガー信号を発生する回路が真空管方式で、単パルス出力にしか対応していなかった。本研究では、同軸マルクス装置の繰り返し動作も想定しているため、新たな高電圧トリガー回路の設計および製作を行った。トリガー回路の信号発生には、実験条件を容易に変更できるように小型のマイクロコンピュータを導入した。次に、TEMアンテナの設計では、シミュレーションソフトにより電磁解析を行いアンテナ形状の違いによる各部の電界を計算した。 今後は、新たに作成したトリガー回路、抵抗分圧器等を取り付けて同軸パルスパワー装置の動作試験を行い、その後、TEMアンテナも接続して広帯域マイクロ波の発生実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同軸パルスパワー装置の内部は、小型コンデンサー約300個で構成されており、定期的なメインテナンスが必要である。このコンデンサーの耐圧試験に時間を要した。また、パルスパワー装置が古いこともあり、付属のトリガー回路も真空管を多用した回路であった。今回、パルスパワー装置の連続的な動作も行う予定にしているため、初期計画に追加してトリガー回路の改修も行うことにした。これらによって、実験に2か月程度の遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、改修したトリガー回路を用いて同軸パルスパワー装置の動作試験を行う。その後、容量分圧器と新たに作成した抵抗分圧器の較正を行い、同軸パルスパワー装置の大気中での出力波形を測定する。また、シミュレーション結果をもとに、TEMアンテナのサイズや形状を決定し、アンテナの作成を行う。 同軸パルスパワー装置の出力部にTEMアンテナを接続し、何らかの広帯域マイクロ(UWB)が発生するか検証を行う。UWB発生の確認は、シールドケース内に設置したホーンアンテナでUWBをピックアップし、クリスタルディテクターで検波しオシロスコープで測定した信号から判断する。その後、様々な実験パラメータを変更し、UWBのパワーが最大となる最適条件をも付ける。また、3GHz以下の周波数領域では、オシロスコープで直接、信号を測定可能なため、その結果から発振周波数と電力の分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
同軸パルスパワー装置の改修に時間を要したため、当初の実験計画よりも2か月程度遅れている。そのため、同軸パルスパワー装置の試運転ができなかったため、その後必要であった消耗品を購入できなかったことで、物品費に差が生じた。また、国際会議への参加を計画していたが、校務の都合で参加できなかったため旅費を支出しなかった。 平成30年度は、まず実験装置を動作させ平成29年度にできなかった実験に必要な消耗品を購入する。また、平成30年度は、同軸パルスパワー装置にTEMアンテナを接続し、広帯域マイクロ波の発生を行う予定である。まず、平成29年度に設計したTEMアンテナを平成30年度に作成するのでその費用を支出する予定である。マイクロ波の発生実験は、マイクロ波が外部環境へ放出されないように簡易のシールドルームを作成して行う。そのために必要な電磁波シールド材量を購入する予定である。さらに、シールドルーム内で、発生したマイクロ波の電磁界を測定するための電磁界プローブの購入を予定している。また、その他、実験で必要な消耗品(電気材料、金属材料等)の支出を予定している。
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