研究課題/領域番号 |
17K06330
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
橋本 好幸 神戸市立工業高等専門学校, 電子工学科, 教授 (20270308)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パルスパワー / 広帯域マイクロ波 / 電磁波 / マルクス回路 |
研究実績の概要 |
本年の計画は、同軸パルスパワー装置を安定動作させ、広帯域マイクロ波の発生確認と実験条件を変更しての発振条件の最適化であった。しかし、同軸パルスパワー装置の安定動作が実現できたいないため、主要部品であるコンデンサの再点検を行った。また、同軸パルスパワー装置の出力電圧の測定には、本体に設置された容量分圧器がを用いていたが、出力部近傍での電圧が測定できるように抵抗分圧器を作成することとして、その設計を行った。また、出力電流についてもシャント抵抗を用いていたが、放電ノイズの影響を受けやすいことからロゴスキーコイルに変更することにした。それらの設計も行った。 また、現時点では同軸パルスパワー装置で広帯域マイクロ波を想定通り発生できていないことから、先行実験としてパルスマグネトロンを利用してマイクロ波を発生させ、そのマイクロ波を種子に照射して、種子の発芽特性への影響を調べることとした。その結果、小松菜の種子にマイクロ波(9.4GHz, 20kW, 1μs, 1kHz)を10秒間および100秒間照射した種子の低温化(8℃)における発芽率とマイクロ波未照射種子の同発芽率を比較した結果、未照射およびマイクロ波を100秒間照射した種子の14日経過後の発芽率は、ほぼ等しく18%前後であることが分かった。これに対してマイクロ波を10秒間照射した種子の14日後の発芽率は約33%となり、マイクロ波未照射種子の約1.8倍となった。この結果より、小松菜種子に特定なパルス幅を持つマイクロ波を照射することで、低温下における発芽特性を改善できることがわかった。今後、同軸パルスパワー装置で広帯域マイクロ波の発生が可能になったら、広帯域マイクロ波を植物種子に照射し、パルスマグネトロンで発生したマイクロ波照射実験の結果と比較検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年に引き続き、電源として使用している同軸パルスパワー装置の動作が不安定であり、現時点では、本来期待していた安定な連続運転が実現できていない。電源が不安定な要因は、主要部品である内部コンデンサー(約300個)の一部に絶縁不良が起こるためであった。個々のコンデンサーの耐圧試験を実施して、不良部品の交換を行った。そのため、まだ安定した実験を行うことができていない。また、2年前より校務で副校長を務めており、それらの業務に時間を取られ、上記の補修も含め計画通りに研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、まず、充電電圧が大きいとコンデンサが絶縁破壊を起こす可能性が高くなるので、充電電圧を定格値の50%以下に落として、同軸パルスパワー装置が安定動作するように調整を行う。また、昨年設計した抵抗分圧器とロゴスキーコイルを作成し、同軸パルスパワー電源に装着し、その動作波形の確認を行うこととする。その後、広帯域マイクロ波の発生実験を行いマイクロ波の発振を確認する。広帯域マイクロ波の発振が確認できた場合は、充電電圧や放電ギャップ長などの実験条件を変更して最大電力が発生できる最適条件を探る。また、ホーンアンテナ近傍での電界強度をD-dotプローブで測定し、マイクロ波出力と比較および検討を行う。さらに、発生した広帯域マイクロ波を小松菜種子に照射して、パルスマグネトロンで発生させたマイクロ波を照射した結果と比較し、植物種子の発芽に対する電磁波の影響を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マルクス電源の安定動作に問題があったため、広帯域マイクロ波の発生を確認できなかった。そのため、実験条件を変更するなどの研究を実施できなかったので、それに必要な機器や部品の購入が行えなかった。また、昨年までに購入した部品や現有の消耗品で、マルクス電源の点検作業や制御回路の設計等を行った。ざらに、年度末に実施しようとしていた実験が感染症拡大等の影響で進められなかったため、当初予定額よりもさらに予算の支出が減少した。
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