白血病細胞株HL-60 (Human promyelocytic leukemia cells)を対象として,長時間の低電圧(ミリ秒,数十ボルトから数百ボルト)の矩形波電気パルスと短時間の高電圧(ナノ秒からマイクロ秒,~キロボルト)の矩形波電気パルスの組み合わせによるGFP導入実験を引き続き行った.これまでの結果で,キュベットへの投入エネルギーを横軸,印加電界を縦軸にとりプロットした結果,単発低電圧長パルスに最適なパルス条件(幅,電圧)があること,また,このような手法で2連続パルスの最適条件を求められることが示唆された.極性も逆極性の方がダメージが少なく導入率が高くなる傾向がみられた.今回さらにパルスの極性依存性,パルス間隔依存性,ナノ秒パルスの複数発印加などの実験を行った。 負極性のナノ秒パルスに対して,10msまたは100msのインターバル後に,正極性または負極性の長時間低電圧パルスを印加した場合,負極性のパルスの方が,生存率,導入率ともに優れていることが分かった。インターバルを100マイクロ秒まで短くすることで,ナノ秒パルス,低電圧パルスとも低いエネルギーでも導入が可能となり,結果,電気ダメージが少なく高い導入効率が得られる組み合わせの知見が得られた。ナノ秒パルスを複数回印加後低電圧パルスを加えることでも導入効率の上昇が確認できた。 対象細胞については導入が困難とされる数種類に対して予備実験を行った。HL-60細胞の実験条件を基にGFP導入実験を行ったところ,対象細胞毎にパルス条件を調節することにより低い電気ダメージで遺伝子を導入できそうであるという知見が得られた。
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