研究課題
本研究は、大強度パルス電子ビーム照射により発生する広域・高線量率放射線を取り扱える特異稀な実験環境を、福島原発の損傷原子炉内に見立て、高温蒸気下で駆動する電気モータとその周辺機材へ高線量率放射線を照射し、その影響分析と障害発生メカニズムを解明することを目的としている。研究実施3年目となる令和元年度は、前年度までの研究成果の中で不足する実験および分析について早期に実施するとともに、これまでの研究成果をまとめ、公表した。期間全体としての研究成果の一つに、パルス電子ビーム照射により発生する放射線の発生様相評価法の提案がある。大強度パルス電子ビーム照射により発生する放射線については、その発生時間が短く、また、多様な波長をもつ電磁波であるため、そのエネルギー分析が困難である。本研究では、市販のシンチレータやCCDカメラに映しだされた画像の欠落等を利用し、パルス電子ビーム照射時に発生する放射線の積算エネルギー量や、放射線の面積密度分布について明らかにした。また、この結果の妥当性を評価するための数値シミュレーションを行い、良好な相関が得られた。なお、これらの結果については、電気学会論文誌に掲載している。高温蒸気および放射線が電気モータとその周辺機材へ及ぼす影響評価については、損傷原子炉内における蒸気環境を模擬するためのチャンバーの製作と、部分放電と呼ばれる微弱放電観測に必要なイメージインテンシファイアを配備し、研究を進めた。その結果、電気モータ巻線に利用されるエナメル線において、障害発生の要因となる部分放電の発生については、周辺湿度の与える影響が顕著であることが明らかとなり、また、エナメル線の表面に付着した水分と放射線とが複合的に関与した場合において、より大きな影響を及ぼす可能性があることが示唆された。なお、本内容に関する結果等については、電気関係学会他、複数の学会等にて報告している。
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IEEJ Transactions on Fundamentals and Materials
巻: 139 ページ: 435~436
10.1541/ieejfms.139.435