これまで明らかにされてこなかったMRI撮像時の妊娠時(初期~後期)、すなわち胎児に発育、成長考慮した胎児内の電磁波エネルギー吸収量および温度上昇を世界唯一の妊娠初期から後期までの人体を模擬した人体解剖モデルを用いて高精度に推定することを目標に本研究に取り組んできた。 そこで、MRI撮像時の母体および胎児内の電磁波エネルギー吸収量と温度上昇を高精度に推定するため、既存の胎児を含む妊娠女性数値人体モデルの高分解能化、高精度化さらに妊娠初期から妊娠後期までの数値人体モデルの構築法の検討を実施してきており、コンピュータグラフィックスの変形技術を応用することで、高精細な胎児を含む妊娠初期から妊娠後期まで容易に変更可能な様々な体型の妊娠女性モデルを構築可能な手法を確立した。また、妊娠女性モデルを用いて、臨床で利用されている1.5 T MRIおよび3 T MRIを対象として、MRI撮像時の胎児内の電磁波エネルギー吸収量は電磁波シミュレーション(Finite-Difference Time-Domain 法; FDTD 法)によって、電磁波エネルギーの吸収に起因する母体および胎児内の温度上昇は生体内熱輸送方程式を用いたシミュレーションによって推定することで、妊娠週例とばく露量および温度上昇の関係を明らかにした。 本研究成果は、胎児MRI検査における胎児の熱的な影響評価に寄与できる。また、本研究で提案した数値人体モデルの構築(変形)法は経年的変化に伴う人体の諸問題を理解する上で非常に有用であり、生体シミュレーションが必要となる幅広い分野への応用展開も期待できる。
|