研究課題/領域番号 |
17K06341
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
白井 肇 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30206271)
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研究分担者 |
石川 良 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90708778)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結晶Si系太陽電池 / ペロブスカイト薄膜太陽電池 / 多接合太陽電池 / テクスチャーSi / 帯電ミスト / 高開放電圧 / 中間電極 |
研究実績の概要 |
本研究は、先行研究で開発した結晶Siと導電性高分子との接合太陽電池を下部素子として上部ペロブスカイト薄膜太陽電池との多接合化により、高効率で且つ1.5Vを超える太陽電池の開発を目標としている。H29年度は下部素子の高効率化およびペロブスカイト薄膜太陽電池の性能向上および中間電極部材の探索に取り組み、以下の結果を得ている。 1)下部テクスチャーSi上に帯電ミストを出発原料とした導電性高分子の製膜により密着性の向上、精密な膜厚制御が可能となり、2x2cm角素子で変換効率16-18%を達成した。 2)上部ペロブスカイト薄膜太陽電池の高性能化では、1段階法によるFAyCs1-yPbIxBr3-x系においてx、yの組成比の調整によりバンドギャップ制御および大気安定性の向上を実現した。具体的にはy:0.2、x:0-0.5で1.65-1.75eVまでのバンドギャップ制御に成功した。その結果変換効率12-14%、開放電圧:0.9-1V、FF:0.6-0.7を得た。 3)FACsPbI3系ペロブスカイト薄膜作製において強誘電体フッ素系高分子を添加した結果ポリマーの薄膜表面上への析出により、大気安定性の向上に有効で且つ太陽電池性能の向上に有効であることを実証した。 4)下部結晶Si/導電性高分子接合太陽電池と上部ペロブスカイト薄膜太陽電池の接合における中間電極部材の探索を行った。具体的にはPEDOT:PSS上に銀ナノワイヤー(AgNW)とITOナノ粒子を塗布し、n型のPCBMを塗布することで接合部分の低抵抗化を検討した。AgNWの塗布回数を調整することで面内のシート抵抗は2-3Ω/cm2まで低減した。しかし直列抵抗は数100Ω/cm2と高く、開放電圧1.25Vまで増大したが短絡電流は数μAと大きく低減した。以上の結果は中間電極の接合部分の低抵抗化が、今後の多接合太陽電池性能向上の克服すべき課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の遂行において上部ペロブスカイト薄膜系・下部結晶Si/導電性高分子接合素子の変換効率は平均値としてそれぞれ12-14%、16-18%を達成していることから、初年度の目標は概ね達成したと考えている。特に強誘電体高分子を添加したペロブスカイト素子による大気安定性向上および開放電圧の向上はH29年度の成果と考えている。上部・下部構成素子の一層の高性能化のための検討が期待される。具体的にはテクスチャー構造Si上のモノリシックな素子形成および同時に中間電極の接合、膜厚方向の低抵抗化のための溶媒、モノリシック接合の検討が課題として挙げられる。これらの課題については帯電ミストによる製膜法およびn型高分子PCBMのAgNW/ITOナノ粒子上の密着性の向上が課題でH30年度はこの点に着目して多接合化により短絡電流および曲線因子を低減させることなく開放電圧の向上に対する接合技術の確立に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の遂行において上部ペロブスカイト薄膜系・下部結晶(c-)Si/導電性高分子接合素子の性能は平均値としてそれぞれ12-14%、16-18%を達成していることから、初年度の目標は概ね達成したと考えている。しかし上部・下部構成素子の一層の高性能化のための基盤技術の検討が期待される。具体的にはテクスチャーc-Si上素子作製による光閉じ込めの促進、モノリシックな素子形成および同時に中間電極の接合、膜厚方向の低抵抗化のための溶媒、モノリシック接合の検討が課題として挙げられる。これらの課題については帯電ミストを前駆体とした製膜法およびn型高分子PCBMのAgNW/ITOナノ粒子上の密着性の向上が課題でH31年度はこの点に着目して多接合化により短絡電流および曲線因子を低減させることなく開放電圧の向上に対する接合技術の確立に取り組む。具体的にはPCBMの低抵抗化を目的にPEI添加およびpHの調整による中間電極の性能向上に取り組む。これらの取り組みとc-Si表面・裏面界面終端化部材の探索を通じて、上部・下部素子の多接合化によるキャリア輸送特性の理解を定常光・過渡光に対する応答から知見を収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度は、当該研究課題「結晶Si系/ペロブスカイト系主タンデム太陽電池の上部ペロブスカイト素子の高性能化に関する研究を進めたことから平成29年度の研究費の使途は、設備備品の購入の他に原材料・基板材料費・分析機器使用に使用した。その結果初年度の計画はほぼ達成できたことから消耗品費が予定していた額以内で実施することができた。 一方H30年度は前年度の成果を基盤に結晶Si系下部素子と上部のペロブスカイト素子の接合部材の探索と接合技術の開発を実施するため、候補となる原材料の購入に予定より多くの研究費を必要とすることからH30年度に繰り越して使用する必要が生じたため。
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