研究課題/領域番号 |
17K06342
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山口 浩一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40191225)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 量子ドット / 自己形成 / インジウム砒素 / シリコン酸化膜 / 分子線堆積 / フォトルミネッセンス |
研究実績の概要 |
初年度の平成29年度では、実施計画書に記載したように、同時供給法によるSiO2/半導体基板上へのInGaAs量子ドットの自己形成について検討した。従来の単結晶基板上へのエピタキシャル成長法による量子ドットの自己形成とは異なり、格段に難しい結晶成長技術の開発であるため、初年度はこれまで量子ドットの自己形成法として多くの研究実績のあるInAs量子ドットの分子線堆積法による成長を試みた。 SiO2/Si基板表面の化学処理後、超高真空下で熱処理を行い、In, Asの分子線を同時に供給し成長させる方法を検討した。原料の分子線供給量、成長温度、成長速度などの成長条件依存性を調べ、SiO2膜上へのInAs量子ドットの自己形成の実現を目指した。InAs成長過程の高速電子線回折(RHEED)観察では、成長の初期から明瞭なリングパターンが現れ、結晶化を確認した。一般には、多結晶成長の場合にリングパターンが観察されるが、成長後の試料の原子間力顕微鏡(AFM)観察では、個々の独立したナノサイズの粒状結晶が観察され、さらに透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、個々の粒状結晶の多くが単結晶構造であり、ランダムな結晶方位をもつことが明らかになった。AFM観察によるInAs単結晶粒のサイズは5 nm~ 15 nm程度で、量子サイズ効果が期待される構造であることが分かった。アンサンブルのInAsナノ単結晶粒のフォトルミネッセンス(PL)測定より、2μm帯と1.1μm帯の発光ピークを観測した。真空/InAs量子ドット/SiO2構造における量子準位の理論計算結果との比較した結果、それぞれheavy holeの基底準位間遷移とlight holeの第1励起準位間遷移による発光に相当することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の目標であったSiO2/半導体基板上へのInAs量子ドットの自己形成法を達成できたことが最大の理由である。非晶質のSiO2膜上であるため個々のInAs量子ドットの配向性を揃えることは困難であるが、SiO2膜上での単一核形成とその後の成長の精密な制御により個々に独立したInAs量子ドット構造を自己形成できたことは大きな意義がある。また、その量子ドットからの発光を確認できたことにより、その結晶性も良質であることを示すことができたことは大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、InGaN系量子ドットのSiO2膜上への自己形成法を検討するために、年度の早期に窒化物系半導体の成長装置を整備し、InGaN系の成長実験を開始する。成長条件の検討を進めながらSiO2膜上への単一核形成の実験を進める計画である。 また、SiO2膜上へのInGaAs系量子ドットの自己形成法の結果を基に、AlGaAs系へと展開していく計画である。AlGaAs系量子ドットは赤色発光の材料として期待されるが、InAs系量子ドットに比べて表面・界面の影響が問題となる可能性がある。そこで、SiO2酸化膜の高周波スパッタ蒸着装置と分子線堆積装置とを連結した超高真空一貫のシステムとして整備し、実験を進める計画である。
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