令和元年度(最終年度)では、ガラス基板上へのInAs量子ドットの自己形成を実現するために、InAs成長前のSb照射効果を調べ、初めてガラス基板上への良質なInAs量子ドットの作製に成功した。 これまではGaAs基板上のSiOx膜上へのInAs量子ドットの成長について検討してきたが、この成長条件ではガラス基板上では良質のInAs量子ドットの形成が難しいことが判明した。そこで、InAs成長前の表面処理法として、Sb分子線照射を検討した結果、これまでのAs分子線照射に比べてInAs核形成密度が約3倍も増加し、InAs量子ドットからの発光強度も増大することが分かった。これはSiOx表面上へのⅤ族原子の吸着状態によってInAs核形成が促進され、さらにIn原子の過剰な凝集を抑制することで、Ⅲ-Ⅴ族半導体結晶のストイキオメトリーを維持しやすく、良質な結晶性が得られたものと考えられる。以上より、このSb照射効果はガラス基板上へのInAs量子ドットの自己形成における有効な手法であることが分かった。
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