研究課題/領域番号 |
17K06343
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
猪熊 孝夫 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (50221784)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 金属 / 界面 / 電子状態 / 量子輸送 / 密度汎関数法 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,ダイヤモンドと金属または絶縁体との界面におけるキャリア輸送現象と原子レベルの微視的構造との相関を明らかにすることを目的とする。ダイヤモンドデバイス応用において重要な「金属電極との接触特性」および「MIS構造におけるチャネル伝導」をモデル化した量子輸送シミュレーションを行い,ダイヤモンド表面終端構造とキャリア輸送特性との相関を明らかにする。それらを系統的に解析することにより,デバイス特性の向上あるいは劣化に関与する本質的要因の解明を目的とする。平成30年度は研究計画に基づき以下のことを行った。 (1)前年度に引き続きダイヤモンド/金属界面の電子状態についてより詳細な解析を行った。ダイヤモンド(111)表面を-H, -OH, =Oの各化学種にて終端した上へAuまたはAlを積層したダイヤモンド/金属界面の計算モデルを構築し,界面近傍の原子に関する部分状態密度に着目して電子状態の解析を行った。今年度は特に,計算結果として得られる静電ポテンシャルの3次元分布に注目して解析を行い,表面終端構造によって変化する電子親和力(ダイヤモンド)・仕事関数(金属)について調べた。 (2)前年度に構成した原子構造モデルについて,非平衡グリーン関数(NEGF)法による量子輸送の解析を行った。NEGF法の計算パラメータを最適化するために,先ずは水素終端面とAuとの接触界面を中心に計算を行った。これらの結果より,計算モデルについても再度見直しを行い,計算の効率化を図ると共に,計算可能なモデルのサイズについても見積もった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり,非平衡グリーン関数(NEGF)法による量子輸送の解析を実施できた。しかしながら,モデルを構成する原子数の増加させた場合において計算時間の伸長は予想していたが,メモリ容量の不足による計算の中断が起こることがあり,計算環境の調整が必要であることがわかった。一方で,初年度から開始した静的な界面電子状態の解析については,着実に進めることができた。水素終端ダイヤモンドは負の電子親和力を持つことが実験的に知られているが,本研究における解析結果もそれを支持する結果が得られた。表面終端構造によってダイヤモンド表面に電気二重層が形成され,それらの差異によって電子親和力等に変化が生じていることがわかった。特にダイヤモンド表面の静電ポテンシャルに関する原子スケールで解析は,新しい知見が得られる可能性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの計算および解析を継続し,ダイヤモンド・金属界面での電子輸送について解析してゆくと共に,新たにダイヤモンド・絶縁体界面の量子輸送特性の計算を開始する予定である。NEGF計算のSCF収束が予想以上に時間がかかっており,前述のようにモデルやパラメータの調整,さらには計算環境の調整が必要である。最終年度であるので,研究成果の発信についても積極的に進める。
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