研究実績の概要 |
当該年度は、前年度に引き続き、欠陥が関係する可能性があるCu2ZnSn(S,Se)4(CZTSSe)太陽電池における白色バイアス光照射による高エネルギー領域の量子効率変化について、フーリエ変換光電流分光(FTPS)法を用いて評価を行った。 ロックイン検出法を適用したFTPS測定により、白色バイアス光照射により1.3eV付近にピークが出現することを示した。また、量子効率変化はバンドギャップエネルギー以上のフォトンエネルギーを有するバイアス光照射によっておこることを見出した。デバイスシミュレーションにより、1.3eV付近にエネルギー準位を形成する欠陥が光吸収層に存在する場合、フォトンエネルギー1.4eV以上で量子効率が減少することを示した。以上の結果より、白色バイアス光照射により、バンドギャップ内に欠陥に関係する準位が誘起され、それに伴って高エネルギー領域の量子効率が減少すると考えられた。 また、FTPS測定では光吸収係数に比例した値が得られるため、光吸収スペクトルを用いた欠陥評価では光吸収係数の絶対値化が必要となる。そこで、FTPS法により得られた量子効率スペクトルから低エネルギー領域の光吸収係数の絶対値化を試みた。試みた光吸収係数絶対値化の方法は、C-V法により空乏層厚を、量子効率スペクトルのバイアス電圧依存性から拡散長を求め、それらを用いて低エネルギー領域で成り立つ量子効率の近似式より、量子効率から光吸収係数の絶対値を導出するものである。この絶対値化法を、吸収係数が報告されているCdTe太陽電池に適用して検証し、低エネルギー領域で同程度の値が得られることを確認した。
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