研究課題/領域番号 |
17K06350
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
青木 裕介 三重大学, 工学研究科, 准教授 (70378313)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電気泳動堆積 / 複合膜 / 放熱材料 |
研究実績の概要 |
本研究は,電気泳動堆積法を用いたセラミックスと高分子からなる複合膜の高熱伝導化、高絶縁化技術の確立を目指すものであり,H29年度は,電気泳動堆積中の堆積膜の生成過程,及び,電気泳動堆積膜の乾燥・硬化過程における構造変化の解析手法を確立し,堆積膜の構造制御方法の確立を図るべく研究を行い,以下の成果を得た。 1.「バインダ樹脂の堆積機構の解明」 堆積膜の液中での種々の構造のバインダ樹脂成分(ポリシロキサン系のオリゴマー,ポリマー)の液中で移動度を調べ,分子量、官能基数、加水分解量の違いが分子の液中移動度に与える影響を明らかにした。さらにこれらの樹脂成分とセラミックス粒子を共堆積する場合,樹脂成分は,セラミックス粒子との相互作用によっても堆積されることを明らかにした。 2.「電気泳動堆積膜の乾燥・硬化過程における構造変化の解析手法の確立」 新たな成膜・乾燥技術の導入により,堆積直後の構造を維持したサンプルを作製可能となった。これにより,バインダ樹脂の分子長,セラミックス粒子の形状等の種々の因子が堆積膜構造へ与える影響を明確化できた。セラミックスの占有率や空孔率などに特徴的な構造を有する複合膜の作製にも成功しており,今後は,電気泳動堆積法による膜の生成過程の構造の把握を進めながら,堆積膜の構造と、熱伝導性、絶縁性、熱応力緩和性などの物性の相関を調べることで、高熱伝導性、高絶縁性を発現する構造を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気泳動堆積時における液中でのバインダ樹脂(ポリシロキサン系分子)の液中移動度の評価結果から,セラミックス粒子と樹脂成分の共堆積時の樹脂成分の堆積はセラミックス粒子との相互作用によるものであることが確認された。共堆積時の堆積機構が明らかになったことは,今後,電気泳動堆積膜の構造設計を行う際の重要な知見となる。 堆積膜乾燥・硬化過程での構造変化の影響を極力排除した成膜方法の確立に成功し,各種成膜条件が堆積膜構造へ与える影響について正確に把握することができるようになった。これは,今後の試料作製における重要な技術である。今後,電気泳動堆積法による堆積膜の生成過程の解析結果とも関連づけることで, 堆積膜の構造と物性の相関についての調査を進めていくことができると考えられる。これらの成果から,初年度の研究は,おおむね計画通りに順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は,初年度に得られた研究成果を発展させて,電気泳動堆積法による堆積膜の生成過程の解析ならびに,堆積膜乾燥・硬化過程での構造変化の影響についての検証を継続して実施する。これまでの研究で得られたセラミックスの占有率や空孔率などに特徴的な構造を有する複合膜をピックアップして,適宜,絶縁特性、放熱性の評価を行い、それを踏まえて堆積条件の見直しをしながら、高絶縁、高放熱性を発現する複合膜の構造の解明を進めていく予定である。
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