本研究は,高分子とセラミックス粒子からなる複合膜における電気泳動堆積による構造制御技術の確立を図り,高絶縁・高放熱性等の機能性を発現する複合膜構造の解明と成膜における膜構造への影響因子の解明を目的に実施された。高分子としては,ポリジメチルシロキサン(PDMS)系樹脂を用いた。前年度までに得た知見を基に,最終年度は以下の知見を得た。 電気泳動堆積法による複合膜の生成過程を調べるために,堆積時間経過による堆積膜構造観察を行うとともに,電気泳動堆積後の堆積膜構造の違いによる堆積膜の乾燥・硬化過程での構造の変化についても評価を行った。前年度までに,懸濁液中の樹脂量や電気泳動堆積条件の制御により,樹脂-セラミクスの堆積過程でのセラミックス粒子への樹脂吸着量の制御が可能であり,それにより膜構造制御が可能なことを明らかとしていた。最終年度は,懸濁液中の分散媒として,PDMSの非溶媒および溶媒を併用することで,堆積後の乾燥過程での液/液相分離現象による3次元構造形成について知見が得られた。 これら各種条件で電気泳動堆積法により作製される堆積膜の構造と、熱伝導性、絶縁性、熱応力緩和性などの物性の相関を調べ,これら特性を共立する膜の作製条件を導出した。厚さ50μmの複合膜において,熱伝導率5W/m以上,絶縁耐圧100kV/mmの特性が得られており,高熱伝導性を発現した堆積膜は堆積方向に直列にセラミックスが連結した構造を有することが示唆された。本研究の成果物である高熱伝導性、高絶縁性を有する複合膜は,電気機器の半導体素子、LED照明等の回路基板への応用が可能であり,素子の高性能化,低損失化に貢献できる。
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