研究実績の概要 |
独自に見出したレアアース、毒性元素を含まない、高温超伝導膜としては低い成長温度で50 K級の超伝導温度Tcを発現する等を特徴とする(Cu,C)Ba2Ca(n-1)Cu(n)O(2n+4):(Cu,C)-12(n-1)n膜に関して、パルスレーザー堆積法における成長雰囲気を独自に開発した高強度酸素原子源:酸素原子の成長面入射密度=10 15乗 atoms/cm2*s を用いて強酸化性とすることにより、電荷供給ブロックの伝導度が向上し、(Cu, C)-1201膜においてTcの約10 Kの上昇が達成された。また、多層型(Cu,C)系におけるホール濃度が過剰酸素と炭酸基の濃度比に依存することに鑑み、単一ターゲットを用いる実用的成長方法において、炭酸基の挿入サイトとなると考えられる電荷供給層のカチオン欠損の制御を実施し、同層の伝導度の一層の向上を試みた。また、この組成制御と(Cu, C)-1201層で有効であった強酸化性の成長雰囲気:酸素原子の成長面入射密度=約10 16乗 atoms/cm2*sの併用を行った。その結果、(Cu, C)-1223層においてTc > 70 Kの超伝導が発現した。また、Tl-1223系のTc > 130 Kの発現させた機構である非等価なCuO2面間でホール濃度を均一化させるための処理を(Cu, C)-1223に適用したところ、Tc > 90 Kが達成された。これらの成果は従来より望まれてきた希少元素を含まず、成長温度が低い、新規な高温超伝導薄膜の作製技術が確立したことを意味しており超伝導材料、プロセス分野に有益な成果として位置付けられる。以上により本研究の目的を達成したと考える。
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