研究課題/領域番号 |
17K06356
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
牧野 久雄 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (40302210)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化亜鉛 / 発光特性 / 電気特性 / 結晶極性 / 欠陥 / プラズマ処理 |
研究実績の概要 |
本研究は、多結晶ZnO薄膜の結晶極性制御技術の開拓と結晶極性が薄膜中の欠陥特性や熱的挙動に与える影響を明らかにしようとするものである。平成30年度の目標は、結晶極性の異なるZnO多結晶薄膜について欠陥特性の違いを明らかにすること、高濃度ドープZnO薄膜の熱処理による特性変化と欠陥との関連性を議論することであった。 多結晶ZnO薄膜の結晶極性に依存した欠陥特性の違いについては、RFマグネトロンスパッタリング法により成膜したO極性ZnOとZn極性テンプレート上に同様に成膜したZn極性ZnOについて、フォトルミネッセンス測定とホール効果測定により物性の違いを評価した。その結果、Zn極性ZnO薄膜ではより高いホール移動度と支配的なバンド端発光を示すのに対し、O極性ZnO薄膜では、ホール移動度はより低く、深い準位の可視光発光バンドが増大した。薄膜構造特性との比較から、O極性ZnOの低いホール移動度は粒内の欠陥に起因すると考察した。これらのことからZnOの結晶極性は、多結晶薄膜中の欠陥形成にも大きな影響があることが明らかとなり、これらの成果をまとめて原著論文として報告した。 また、RFマグネトロンスパッタ法によるZnO成膜について、種類の異なるガラス基板上の成膜、基板表面改質効果を検討したところ、基板表面状態が薄膜構造特性に大きく影響することが分かった。その一方で、成膜したZnO薄膜へのプラズマ処理効果を検討し、電気特性および光学特性が劇的に変化すること、その振る舞いが結晶極性にも依存することなどが明らかとなった。 高濃度ドープZnO薄膜に対する熱処理の影響については、電気特性劣化に対するドーパント依存性、欠陥由来発光の熱処理温度・雰囲気依存性、熱安定性に対する結晶極性依存性を調べ、欠陥の熱的な挙動について新たな知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、ZnO多結晶薄膜の結晶極性制御技術の開拓と結晶極性が薄膜中の欠陥特性や熱的な安定性に与える影響を明らかにしようとするものである。 初年度である平成30年度の目標は、結晶極性の異なるZnO多結晶薄膜成膜について欠陥特性の違いを明らかにすること、高濃度ドープZnO透明導電膜の熱処理による特性変化と欠陥との関連性を議論することであった。これらの目標は概ね順調に達成した。この中で多結晶ZnO薄膜の結晶極性と欠陥との関連性については、原著論文としてまとめ学術雑誌に出版された。さらに、基板表面処理を検討する中で、ZnO薄膜へのプラズマ処理が欠陥特性に劇的な影響があること、その効果に結晶極性依存性が見られることなど、当初予定していなかった新たな知見も得られた。以上の理由から、研究は当初の予定以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り、基板表面状態や成膜時のプラズマ状態が薄膜成長と欠陥形成に与える効果と影響、形成される欠陥の熱挙動とそれに対するドーパントや結晶極性の影響について明らかにする方向で研究を推進する。さらに本研究過程で見出されたZnO薄膜へのプラズマ処理効果についてのメカニズムの解明を進め、さらなる研究発展を目指す方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に化学分析の外部委託を予定していたが、サンプルの準備が間に合わなかったため、その分未使用額が生じた。次年度にサンプルの準備が整い次第、予定していた分析を行う。
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