本研究は、多結晶ZnO薄膜の結晶極性制御技術の開拓と結晶極性が薄膜中の欠陥特性や熱的挙動に与える影響を明らかにしようとするものである。最終年度となる2019年度は、マグネトロンスパッタ法による極性制御を確立し、高濃度ドープZnO薄膜における、ドーパントの熱的な挙動、欠陥形成とそれらに対する結晶極性の影響を明らかにすることを目標としていた。 RFマグネトロンスパッタ法による結晶極性制御では、ガラス表面化学状態の制御、成膜時のプラズマ雰囲気の制御、2段階成長における膜厚制御により、ZnO多結晶膜の配向性、極性との相関を検討した。極性の異なるZnO成膜において酸素ガス導入効果を検討し、電気特性への大きな影響が極性に依存して変化することが明らかとなった。成膜雰囲気の効果や影響がZnOの極性に依存する可能性を示唆するものである。 Al添加ZnO薄膜の成膜温度依存性およびZnの熱脱離特性が電気特性に与える影響を検討し、耐熱性に対するAl不活性化膜およびプラズマ処理効果の違いから、電気特性劣化機構の解明とともにAl不活性化膜による電気特性低下の抑制を実現した。これらの結果は、高濃度ドープZnO多結晶薄膜の高性能化への一つの指針を与えるものであり、結果の一部を取りまとめ原著論文として発表した。 さらに、Al添加ZnO薄膜とGa添加ZnO薄膜に対して、硬X線光電子分光法によってドーパントの化学状態を評価し、AlとGaの共通点と相違点について電気特性とともに整理し、高濃度ドープZnO多結晶薄膜の電気特性におけるドーパントの変化と粒界の寄与を明らかにした。
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