研究課題/領域番号 |
17K06358
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩田 展幸 日本大学, 理工学部, 准教授 (20328686)
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研究分担者 |
永田 知子 日本大学, 理工学部, 助教 (00733065)
高瀬 浩一 日本大学, 理工学部, 教授 (10297781)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 巨大電気磁気効果 / Cr2O3 / 積層膜 / 電界駆動型磁気メモリ |
研究実績の概要 |
YAlO3(YAO) (001)基板上にFeをドープした(Cr1-xFex)2O3成長について詳細に検討した。電界印加磁化反転デバイス(磁気メモリ)実現のためには、下部電極の作製とr面(1-102)面配向Cr2O3薄膜に発生する溝を抑制する必要がある。下部電極探索にはより格子定数の大きな基板を用いること、溝の抑制には、格子ミスマッチを低減することが求められる。そこで、YAO基板を選択した。YAOはa = 0.5176 nm、b = 0.5307 nm、c = 0.7355 nmの斜方晶である。Cr2O3[110] //YAO[100]、Cr2O3[-111]// YAO [010]での面内格子ミスマッチは、それぞれ-4.29%、0.92%である。格子ミスマッチを低減するために、Feをドープした(Cr1-xFex)2O3薄膜を作製した。(Cr0.98Fe0.02)2O3薄膜の表面は、300~500nm×500~2000nmの長方形状のグレインで構成され、グレイン間には溝が発生した。溝の深さは平均24 nmであった。ただし、単一グレイン上には原子レベルで平坦なステップテラス構造を確認した。YAO基板上FeノンドープCr2O3薄膜および、サファイア基板上(Cr0.98Fe0.02)2O3薄膜と比較して、グレインサイズは約3.7倍、約1.4倍増大し、溝面積は、約48%、約51%抑制された。精密なX線構造解析より、FeドープCr2O3薄膜の格子定数はノンドープCr2O3とほぼ同一であり、基板からのストレスは緩和されていた。つまり、2%のFeドープで格子定数はほぼ変化していないが、表面状態が著しく改善されたことがわかった。2%のドープがわずかに格子を歪ませ、コアレッセンスが促進された結果、大きなグレインが成長したと予想している。それが溝面積の抑制にもつながったと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
強磁性体/Cr2O3積層膜作製に用いるスパッタ装置のターボ分子ポンプが破損し、修理不能となり、新たにポンプを準備し装置立ち上げに時間を要した。さらに、立て続けに、Cr2O3薄膜を作製するカソードの不具合により、成膜が不可能となったため、当初予定より大幅に進捗が遅れた。予備的に準備していたパルスレーザー堆積装置においても、同時期に装置改善を行っていたため、成膜が不可能であった。このような状況の下、FeをドープしたCr2O3薄膜作製の条件最適化を行い、表面観察、精密結晶構造解析の結果、表面平坦性を大きく改善できたことを示した。
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今後の研究の推進方策 |
YAlO3(YAO)基板上での強磁性体/Cr2O3積層膜の作製と異常ホール効果測定、磁化測定により、磁化曲線と磁気特性の温度依存性を取得する。Cr2O3のネール温度確定と共に、強磁性体の角型比の向上、交換バイアス磁場の大きさの向上を目指して、Feドープ量および成膜条件の最適化と強磁性体膜の膜厚最適化を行う。強磁性体/Cr2O3積層膜に電場磁場冷却を行い、交換バイアス磁場の制御が可能であるか明らかにすると同時に、磁気力顕微鏡やSQUID顕微鏡を用いて、電界印加による磁化反転の直接観察を行う。一方、電界駆動型磁気メモリのデバイス化に向けて、下部電極の第一候補であるCeを4%ドープしたCaMnO3薄膜をパルスレーザー堆積(PLD)法で作製した後、Cr2O3薄膜堆積をスパッタ法もしくはin-situにてPLD法を用いて行う。また、Cr2O3薄膜の表面平坦性を向上させるために、約3度傾斜して研磨したYAO基板を用いる。グレインの大きさがさらに増大してグレイン間の溝が減少し耐電圧が向上すると期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置不具合のため研究の進捗が遅れており、薄膜作製に用いる消耗品を購入しなかったため。H30年度は、アセトン、エタノール、基板アニール用ルツボ等、薄膜作製の準備にもちいる消耗品を購入して、研究を遂行する計画である。
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