研究実績の概要 |
令和元年度の研究業績はSiC量子ドットの実証である. 発光素子を目指した従来のSiCドットは,単結晶Si(c-Si)からアモルファスSi(a-Si)までのSi半導体基板へのCホットイオン注入法を用いて作製し,その大きなPL発光を実証してきた.しかし,バンドギャップEGの小さいSi層(EG=1.1eV)中の大きなEGを持つSiCドット(EG>2.4eV)は量子ドット(QD)ではないため,励起電子寿命が小さくPL発光効率が低下する.従って,SiC-QDを実現し,その励起電子の量子的閉じ込め効果によるPL発光効率の増大化が望まれる. そこで,EGの大きなSi酸化膜(EG=9eV)へのSi/Cのダブルホットイオン注入とその後の高温N2アニール法による簡易なSiC-QD形成法を開発した.X線光電子分光法により酸化膜中においてもSi-C結合を確認でき,SiC形成を実証できた.また,電子顕微鏡観察から,酸化膜中に2nm程度の粒径のSiC-QDを1E12cm-2程度の密度で確認できた.立方晶及び六方晶のSiCポリタイプをも確認できた.更に,UV-Raman観測により,Si-C振動モードのTOバンド,酸化膜中に析出したC-C振動モードのT,及びDバンドを確認できた. Si中SiCドットより数倍大きなPL発光をSiC-QDにおいて達成し,これはSiC-QDにおける励起電子の量子的閉じ込め効果による発光効率の増大に起因すると思われる.以上から,SiC-QDは発光素子構造として有望な構造と期待できる. 以上の研究成果を,国際学会における国際固体素子材料学会で1件,IEEE Silicon Nanoelectronics Workshopで1件の計2件,国内学会の応用物理学会において1件の学会発表を行った.更に,査読付き論文であるJpn. J. Appl.Phys.に2件,論文掲載された.
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