研究課題
窒化ガリウムショットキーダイオードの水素応答性に関しては、電極金属と半導体(窒化ガリウム)間に存在する自然酸化膜が重要な役割を果たすことが報告されているが、詳細な応答メカニズムは不明である。また、この自然酸化膜の構造等についてはほとんど知られていない。そこで、本年度は、窒化ガリウムショットキーダイオードの水素応答性のメカニズムを解明することを目的として、窒化ガリウムの自然酸化膜の構造を調べた。試料としてはHVPE法(ハイドライド気相成長法)で作製されたバルク窒化ガリウム単結晶の(0001)面を用いた。試料をSPM洗浄(硫酸と過酸化水素水の混合液)後に、クリーンルーム内に長時間放置して、自然酸化膜を形成した。X線反射率法による測定の結果、窒化ガリウム表面には約1.1nmの異層が存在し、また、AFM測定によって、そのRMSが0.087nmときわめて平坦であることが確認された。その後、超高真空チャンバーにロードして、表面観測を行った。観測手法としては、LEIS(低速イオン散乱分光法)及びRHEED(反射高速電子回折)を用いた。試料の表面を清浄化するために、超高真空中で750℃、15分の加熱を行った。LEISの結果、窒化ガリウムの自然酸化膜の表面はガリウムと酸素のみで構成されていることがわかった。さらに、角度分解測定を行ったところ、ガリウムのピークが6回対称であることが明らかになった。この結果から、窒化ガリウムの自然酸化膜はアモルファスではなく、単結晶の酸化ガリウムがナノシート状になっていることが判明した。さらに、入射角度を様々に変えてRHEEDを行うことによって、単結晶の酸化ガリウムナノシートは窒化ガリウムに格子整合していることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
これまで窒化ガリウムの自然酸化膜については未知であったが、今回の研究によって、その実態が、窒化ガリウムに格子整合した単結晶の酸化ガリウムがナノシート状になっていることが初めて明らかになった。この発見は、水素センサのみならず窒化ガリウムデバイス全般に対して重要な知見になりうる。
窒化ガリウムショットキーダイオードの水素応答性のメカニズムを解明するために、窒化ガリウムと自然酸化膜のバンドアラインメントおよび自然酸化膜のバンドギャップ内準位と水素との関係を調べる。その後、インフォマティクスを用いて、電極金属と半導体間の絶縁膜を最適化して、高特性な水素センサに繋げる。
本年は想定外の方向で研究の進展がみられたため、予定品の購入を次年度にまわした。
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 56 ページ: 128004
巻: 56 ページ: 110312