研究課題/領域番号 |
17K06365
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
色川 芳宏 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (90394832)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / MIS界面 / 中間層 / 自然酸化膜 |
研究実績の概要 |
窒化ガリウムショットキーダイオード型水素センサに関しては、電極金属と半導体(窒化ガリウム)間に存在する自然酸化膜が重要な役割を果たすことが報告されている。2017年度の研究によって、この自然酸化膜が通常の半導体にみられるアモルファス構造ではなく、結晶性の酸化ガリウムがナノシート状になっており、さらにはその酸化ガリウムの格子は窒化ガリウムと整合していることを明らかにした。2018年度は、紫外光電子分光法(UPS)を用いて、この自然酸化膜の電子物性的評価を行った。その結果、以下の3点が明らかになった。 1)価電子帯上端からフェルミレベルに向けてテールを引いており、表面準位の存在を示唆している。このような表面準位はGaN(0001)清浄面でも確認されており、Ga空孔関連の欠陥の存在が起因すると報告されている。また、これまでの研究で自然酸化膜が複数の結晶系からなる可能性も確認されており、この粒界の存在のために表面準位が現れる可能性がある。 2)ピークエネルギーがGaN(0001)清浄面のそれとは異なっている。GaN(0001)清浄面のピークエネルギーはGa(4s)-N(2p)の混生軌道に関係するが、GaN(0001)自然酸化膜ではGa(4s)-O(2p)の混生軌道に関係すると予想されるためである。 3)一般的に報告されているGaN(0001)清浄面のUPSスペクトルは今回のGaN(0001)自然酸化膜のUPSスペクトルに似ているものがある。GaNの自然酸化膜は除去することが困難であることが知られており、UPSスペクトルのみで清浄度を判断する際には注意が必要である。 その他、窒化ガリウムの金属-絶縁膜-半導体(MOS)構造において、絶縁膜-半導体界面に数原子層の結晶性中間層が存在することを明らかにした。この層は、界面特性に本質的な役割を果たすと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、窒化ガリウムの金属-絶縁膜-半導体(MOS)構造において、絶縁膜-半導体界面に自然酸化膜に酷似した構造の結晶性中間層が存在することを明らかにした。この層は、界面特性に本質的な役割を果たすものであり、電子素子の特性向上のために重要であると思われるが、本研究の目的の水素センサにおける位置づけは不明であり、今後の研究で明確にする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
窒化ガリウムの金属-絶縁膜-半導体(MOS)構造を持つ素子において、水素応答と界面構造の相関を明らかにすると同時に、高特性センサ実現につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は研究が当初の目的外の方向に進んだために予算に余剰が生じた。2019年度は当初の研究目的を遂行するために必要な設備を導入する。
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