研究課題/領域番号 |
17K06367
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
立木 隆 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 教授 (60531796)
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研究分担者 |
内田 貴司 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 教授 (50531802)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 発振素子 / 銅酸化物超伝導体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、銅酸化物高温超伝導体に内在する固有ジョセフソン接合を用いたテラヘルツ波発振素子の出力特性を、アレー化により改善することである。当該年度では、前年度、実施に遅れが生じていた「放射指向性測定系の構築」の継続および当該年度の計画通り「単素子の特性評価」、「多素子アレーの設計と試作」を進めた。 放射指向性測定系の構築・・・前年度の検討結果を基に、当初計画の発振素子固定・検出器回転から発振素子回転・検出器固定へ、回転機構を変更して測定系を構築した。とりわけ発振素子回転用に新たに導入した2つの極低温用自動ステージにより2軸回転を実現する機構を組み上げ、それぞれの最小ステップ角度を100分の1度以下にできるシステムを実現した。また、温度変動に影響を受けにくい室温ボロメータ材料(チタンがドープされた酸化バナジウム薄膜)を作製し、検出器に利用できる見通しが得られた。 単素子の特性評価・・・垂直指向性を有する121キャビティモードによるテラヘルツ波発振を観測するために、アンダードープのビスマス系銅酸化物超伝導体を用いて発振素子を試作した。測定した放射電力のバイアス電圧依存性から121モード発振に有効な広いバイアスマージンを同素子が有することを確認した。 多素子アレーの設計と試作・・・前年度に引き続き数値シミュレーションにより同素子のアレーの放射特性を調べた。本研究で着目している121モード発振では、アレー化による放射電力の増加や放射パターンの先鋭化に対するアレー間隔の影響が、他のモードに比べて非常に小さいことが確認された。そのため121モード発振を利用すると素子アレーの設計に自由度があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に挙げた「放射指向性測定系の構築」が漸く完了したものの、以前、製作した発振素子から観測されていた121モード発振が、本研究で年度当初に試作した素子から発生しないことが判明した。その原因として、発振素子材料の銅酸化物超伝導体のキャリアドープ量が過剰であったために、バイアス領域が減少し、121モードを励振できる電圧まで素子をバイアスできなかったことが挙げられる。現在、ドープ量が過剰でないアンダードープ試料を用いて発振特性の改善を行っている。以上の原因解明と特性改善に時間を要したため、素子アレーの試作にも遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、これまで計画していた単素子における発振モードと放射パターンの関係を、本研究で構築した放射指向性測定系による実験を通して明らかにし、これまでの理論から得られた予想結果と比較検討する。 次に2~5素子の小規模のアレーを構成し、その放射電力と放射指向性を評価する。その際、本研究のこれまでのシミュレーションから得られた、121モード発振ではアレー間隔が放射特性に与える影響が小さいことについて、アレー間隔を変化させた素子アレーの特性評価により検証する。 小規模アレーの結果を基に、アレーの大規模化を行い、1 mW以上の出力を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射指向性測定系用の自動ステージの購入に関しては、極低温対応のものに変更したために、想定していた金額よりも高額であった。これに対して、当初予定していた国際会議の出席を取り止めたことと装置の修理が生じなかったことによる減額により、結果的に次年度使用額が生じた。 使用計画としては、本研究の成果発表のために、赤外線学会等の国内の研究会および中国で開催予定の東アジア超伝導エレクトロニクス国際会議等の参加費と旅費に使用する予定である。
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