研究課題/領域番号 |
17K06368
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
河村 希典 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90312694)
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研究分担者 |
佐藤 進 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (50005401)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 液晶レンズ / レンズパワー / 輪帯電極 / 光学位相差分布 |
研究実績の概要 |
これまで、機械的駆動部を必要せず電圧のみにより凸レンズ特性~凹レンズ特性を制御可能な『液晶レンズ』を作製し、そのレンズ特性及び光学システムの応用について研究を行って来た。本研究の目的は、少数の輪帯電極により液晶層の利用効率が最大で且つ滑らかな放物面状の光学位相差分布(屈折率分布)を実現することであり、輪帯電極及び高抵抗膜を有する新規液晶レンズを設計・試作し、理想的な球面状のレンズ特性を示す「有効なレンズ径の拡大」と有効径を維持しつつ「レンズパワー(焦点距離の逆数)の可変幅を拡大」することである。本研究の成果は、機械的駆動部が無いアクティブな光学素子へ広く応用することができ、単一レンズ系における「全焦点位置画像処理システム」及び「遠近両用・老眼用焦点可変メガネ」や「種々の光学デバイスにおけるレンズパワーの可変調整」などに貢献することが期待される。 平成29年度は、液晶レンズⅠ(輪帯電極・高抵抗膜)を設計し、液晶レンズにおける有効なレンズ径を拡大・維持しつつレンズパワーの可変幅の拡大を行った。液晶レンズにおける液晶層の厚み、絶縁層極薄ガラス厚、液晶材料の諸パラメータ、誘電率、高抵抗膜(酸化亜鉛膜または有機導電膜)の抵抗値及び輪帯電極の直径・電極数について、液晶分子の配向シミュレーションより構造パラメータを算出した結果から、設計を行った。その結果をもとに、液晶レンズの試作を行った。その液晶レンズの光学位相差分布、レンズパワー、収差・応答回復時間の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少数の輪帯電極で滑らかな放物面上の光学位相差分布を実現するために,高抵抗膜及び輪帯電極を用いた液晶レンズを作製し、その電気光学特性について測定できている。さらに、新たな構造の改良することも考えているためため、おおむね順調に研究がすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 液晶レンズⅡ(輪帯電極・円形高抵抗膜)の試作:輪帯電極と円形高抵抗膜または有機導電膜を用いた液晶レンズⅡの設計・試作を行う。平成29年度での問題点を改善することを目的とし、最外輪帯電極縁付近での電界分布を制御することで、理想的な光学位相差分布(放物線特性)に近づける実験的検証を行う。有効なレンズ径・レンズパワー可変範囲の拡大を目指す。特に円形高抵抗膜の直径、抵抗値と各部の厚み等の構造パラメータとの関係について明確にする。 (2)液晶レンズⅢ(輪帯電極・円形スリット高抵抗膜)の試作・評価:これまでの液晶レンズの作製技術と実験結果を踏まえ、液晶レンズⅢの試作・評価を行う。円形高抵抗膜を円形2領域に分離することにより、理想的な放物面状の光学位相差分布に近づけ、非球面レンズ・2焦点制御機能の可能性を明らかにする。 (3)レンズ特性の評価(光学位相差分布・焦点距離・収差・応答回復時間):高抵抗膜、絶縁膜及び液晶のコンデンサ容量によりインピーダンス特性を示すことから試作した液晶レンズの光学特性の周波数依存性についても実験を行う。光学的・電気的・応答回復時間特性については、前年度の測定技術で評価を行う。 (4)フローティング輪帯電極を有する液晶レンズのレンズ特性の評価:液晶レンズのリード線を少なくするため、いくつかの輪帯電極を電圧無印加のフローティングとした場合のレンズ特性について評価する。 (5)二次評価・まとめ:研究成果に対する二次評価を行う。今年度の課題目標の位置付けを明確にし、問題点等の抽出を行い、次年度への問題点を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度にカナダで開催される国際会議で講演するために、繰り越すことにした。
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