研究課題/領域番号 |
17K06369
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
木村 孝之 茨城大学, 工学部, 准教授 (50302328)
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研究分担者 |
増澤 徹 茨城大学, 工学部, 教授 (40199691)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁気センサ / 集積化センサ / CMOS / ホール素子 |
研究実績の概要 |
平成29年度は3つの項目について検討を行った。まずセンシング特性の向上について述べる。本研究を行うまでの研究によって低周波ノイズが問題になっていた。そこでこの低周波ノイズを減らすために有効な相関二重サンプリングを実デバイス上で実現するための回路設計を行った。このデバイスは東京大学 大規模集積システム設計教育研究センターを通して試作を行うものである。この試作で利用するプロセスではこれまで実現してきた磁気センサの構造が利用できなかったため、相関二重サンプリングを実現できる様にセンサ構造を新しく考案した。設計では7.2μm角の磁気センサによる画素を3×3個のアレイ状に配置した。この画素の中には相関二重サンプリングを実現するためのスイッチング回路と回路サイズを最適化した増幅回路を搭載した。 さらに今回利用するプロセスに最適化した磁気ビーズ運搬用のコイルの設計を行った。今回利用したプロセスでは、表層に近い金属層を使う事でより多くの電流を流すことが出来る。設計の結果、1μm幅の配線を利用したコイルを実現出来たため、5mAまでの電流を流すことができる様になった。 最後に細胞観測、順送り運搬システムの処理速度向上としてFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて細胞の位置観測の精度を上げるための信号処理方法について検討を行った。離散コサイン変換符号位相相関による位置検出前にノイズを除去するためのローパスフィルタを導入し、さらに、相関関数に対するフィッティング処理の導入によって位置検出精度の向上を試みた。その結果、ローパスフィルタとフィッティング処理が共に無い場合の位置検出正答率が20%であったが、共に処理が有る場合の位置検出正答率は98%まで向上する事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は「磁気ビーズのセンシング特性の向上」、「磁気ビーズの順送り運搬機構の速度向上」、「細胞の観測、順送り運搬システムの処理速度向上」を行い、10μm以下の細胞の観測制度の向上と順送り運搬速度の向上を実現することである。 はじめに「磁気ビーズのセンシング特性の向上」を目的として、新しい製造プロセスを用いる集積化磁気センサの設計を行った。新しい製造プロセスを採用した訳は、上記の目的を実現するために有利になる特性があるためである。ただし、これまでの製造プロセスで利用していた構造を使えなくなったため、新しい回路を追加することでこれまでと同様の特性を実現する回路の設計を行った。加えてこれまで問題になっていた低周波ノイズを減らすことが出来る相関二重サンプリングを実現する回路も設計を行った。 続いて「磁気ビーズの順送り運搬機構の速度向上」を目的として、新しい製造プロセスを用いたコイルの設計を行った。これまで利用していた製造プロセスに比べて新しい製造プロセスでは5倍の電流を流すことが可能となった。そこでこの新しい製造プロセス用にコイル構造を最適化した。 最後に「細胞の観測、順送り運搬システムの処理速度向上」を目的に、細胞位置の観測精度を向上するための信号処理方法を開発した。これまでノイズに対する処置を行っていなかったが、新たにローパスフィルタ処理を行うことで位置検出正答率を98%まで上げる事が実現出来た。 以上の様に全ての目的に対して計画通り研究を進めることが出来たため、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
順調に研究が進んでいるため、研究実施計画に従って研究を進める。ただし新しい製造プロセスでの試作が製造会社の都合により遅れる予定である。よって、平成30年度の最初の内は、「細胞の観測、順送り運搬システムの処理速度向上」の研究を中心に進め、試作品が完成し次第、センサとコイルの特性評価を行う予定である。この方策により、予定通りに研究が推進できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初今年度中に新しい製造プロセスにより試作を終わらせる予定であった。しかし、平成29年度の試作予定が研究計画の策定時から変更になったため、試作の終了が平成30年度に入ってしまった。そのため次年度使用額が生じた。 次年度使用額と翌年度分の予算をあわせて試作代金を支払う予定である。
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