令和2年度はシステムの評価と測定精度向上のために、位置検出に使われるアルゴリズムの改善と、新構造のコイルによる磁気ビーズの制御性向上に関する研究を行った。 まず令和元年度までの研究では、細胞観測、順送り運搬システムを実現するためにFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いたシステムにより5700フレーム/秒までの処理速度が実現できていた。これを本研究の目標である8000フレーム/秒まで向上するための検討を行った。令和元年度までの処理方法では一つのモジュールで全ての処理を行う様に設計をしていたため、演算速度の最適化が不十分であると考えられた。そのため令和2年度は処理のモジュール化を進め、高速フーリエ変換等の各演算での処理速度の見直しを行った。その結果、並列化する前の段階で1.02msで処理を終えることができた。モジュール化に時間がかかってしまい並列処理を実装できなかったが、これまでの研究結果を踏まえて並列化は容易に実現できると考えられる。令和元年度と同様に8並列の処理が実装できれば、7800フレーム/秒を実現できると予想でき、並列化で本研究の目標を達成できると考えられる。 続いて令和元年度に設計した磁気ビーズを駆動するためのコイルを作製し、磁気ビーズの運搬特性について評価した。コイルの作製は東京大学大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター基盤設計研究部門(旧VDEC)を通してローム株式会社0.18μmCMOS製造プロセスにて行われた。実験には4.5μmの粒径の磁気ビーズを使用した。実験の結果30μm/sの速度で動かすことができ、本研究の目標である10μm/s以上の移動速度を実現できた。
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