研究課題
Bi2Sr2CaCu2O8+x(Bi2212)の固有接合素子はテラヘルツ波発振素子として注目されるが,従来の作製方法は高価な真空装置や複雑な作製プロセスを要する.そこで,我々は溶液法と家庭用インクジェットプリンターによる印刷法を組み合わせた手軽な作製方法の開発を試みた.令和元年度はCDレーベル印刷可能なEPSONインクジェットプリンターを用いた素子の試作を試みた.Bi2212原料溶液の溶剤の主成分はキシレンである.インクカートリッジやプリンターヘッドのパッキン等の部品のキシレンに対する耐性を確認する実験により,それらが低いことが確認され,Bi2212原料溶液をインクカートリッジに充填して使用できないことが分かった.そこで,プリンターによるフォトレジスト印刷と化学エッチングの組み合わせによりBi2212の微細加工を行う方針に切り替えた.使用したフォトレジストは,日本アグフアマテリアルズ(株)製のDipamat Etch Resist(ER01)である.フォトレジスト印刷の際は,CD/DVDトレイにくぼみの深さ調整用の台座を取り付け,その上に試料を固定した.インクカートリッジには,フォトレジストをエタノールで3倍に希釈した溶液を充填した.作製手順は次の通りである.(1)溶液法によりBi2212薄膜を成膜した.(2)フォトレジストを所望のパターンで印刷後,約10分間紫外線を照射しフォトレジストを硬化した.(3)約4.8 wt%のクエン酸に約1分間浸漬してBi2212薄膜をエッチングした.(4)約0.5 wt%のNaOHに約15秒間浸漬してフォトレジストを除去した.その結果,最も細い部分の幅が75μm程度のブリッジの作製に成功した.この程度のサイズであればBi2212固有接合素子として機能すると考えられる.今後この作製法により得られた素子の性能を検証する実験等を行う予定である.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 1293 ページ: 012012~012012
10.1088/1742-6596/1293/1/012012